地震から身を守るためにできることを考えるシリーズ

地震から身を守る家づくり~【方法・手段2】

2019.12.12

地震から身を守る住宅を建てるための方法を説明しています。耐震性能の高い家づくりは地震から身を守るために重要です。

耐震性能の高い家に住もう

当たり前だと言われたらそうなのですが耐震性能の高い家づくりは、地震から身を守るためには重要です。
「耐震」についての詳しい説明は、地震に強い建物構造【基礎知識3】にありますのでご参考ください。
では、具体的にどうすればいいのかを説明していきます。

壁の強化

地震とは地殻の変動により地盤がずれる事で生じる振動です。
その上下左右に振動する力が家に伝わり建物自身も3次元に大きく揺さぶられます。
家が倒壊したり変形する大きな要素はその左右に揺さぶられる振動です。2階建の場合地面が揺れるとその約倍の揺れが2階で起こります。地面が1揺れるのに2階が2揺れるという事は1階の壁が平行四辺形に大きく変形しているから起こる事です。

ある程度平行四辺形に変形しても頑丈であれば破壊されず元に戻る力が働き、振動が納まった後もほぼ元通りになります。これを弾性域と言います。
しかし大きく変形し破壊され始めると元に戻る力を失ってしまう塑性域という状態に入ってしまいます。そうなればもう元に戻る事が無く破壊が起こり始めて、最悪の場合は倒壊する事になります。

こちらは以前の記事でもご紹介した、家が倒壊するステップです。

地震から身を守る住宅:家が倒壊するステップ01

STEP 01

地震による揺れで建物がゆすぶられる

地震から身を守る住宅:家が倒壊するステップ02

STEP 02

揺れで壁が平行四辺形に変形する

地震から身を守る住宅:家が倒壊するステップ03

STEP 03

2階の重さに耐えられなくなり倒壊する



そうならない為には壁に大きな力が加わっても平行四辺形にならない強い壁が必要となります。この地震力に対抗する為の壁を耐力壁と言います。

耐力壁の性能を表す数値として壁倍率があります。壁倍率1.0倍は、壁の長さ1m当たり1.96kNの水平荷重(横からの力)に抵抗できることを意味します。
この値が高いほど、性能が高く、大きな地震力に耐えることができます。



地震に強い家づくりにはこの壁倍率が高い壁を数多く備えられた住宅を作る事が重要です。
しかし、快適に暮らすには部屋の広さや窓の大きさ、通路の広さが必要で、耐力壁をやみくもに増やすことは難しいでしょう。


快適な空間を作る事と強い耐力壁を数を多く配置する事、この2つを両立することが良い家づくりといっても過言ではないでしょう。

よく「柱が多い」「柱が太い」と言えば地震に強い家と思いがちですが、地震に強い家づくりには「壁が強い」「強い壁が多い」事が重要です。

基礎の強化

「強い壁を作るということは、地震に強い家づくりにおいて重要です。
ですが、ただ「強い壁を作ればよい」という事だけでは家は強くなりません。
壁を強くしても横から押せば回転します。回転するという事は変形した事と同じで家は平行四辺形になってしまいます。
回転しない為には壁の両方の下の端をしっかりと基礎と繋ぎ、持ち上がらないようにする必要があります。これでようやく横からの力を壁がしっかりと受け止める体制が出来上がります。

強い壁を作ったら壁以上に強い基礎を作り壁と基礎をしっかりと繋ぐ事が必要です。その繋ぐ役割を担った部材がホールダウン金物という基礎と壁を繋ぐ部材です。この3点が揃って初めて完成です。

基礎に埋め込まれたアンカーボルト。短いものは基礎用。長いものはホールダウン金物用。

2階(3階)の強化

意外に感じるかもしれませんが、強い壁の効果を発揮するには2階(3階)の床も重要です。家には南北方向、東西方向に数列の壁が並びその壁の力でその方向から来る地震力に対抗します。
数列有るうちの1列だけで地震力に対抗できません。数列全てが同時に対抗する事で威力が発揮できます。
その数列全てを結束し合体させる役割をするのがその上に有る上階の床です。

数列の壁がその上の床で繋がれる事でスクラムを組む様な形となり大きな力に対抗出来ます。
上階の床は強い壁の力を充分に発揮する為の重要な役割を果たしています。



床の強度が大切といっても皆さんにはピンと来ないかもしれませんが、憧れの新築のをイメージした際に多くの方々は吹抜けのある家を想像されるのではないでしょうか?
吹抜けとはある意味今お話しした耐震に大切な床が無いことを意味します。



やみくもに吹抜けを作る事は住宅の耐震強度を落とす事になりかねません。ただ吹抜けを作る事で不足する床の強度を補う事は出来ます。
簡易法ではなく詳しく構造計算する事で吹き抜けによって不足した強度を他の床で補い安心安全な家を作りだす事は可能です。
大きな吹き抜けを作る際には許容応力度計算などの詳細な構造計算を行う事をおすすめします。

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