地震に強い家づくりのために知っておきたい基礎知識シリーズ

地震で引き起こされる災害【基礎知識1】

2019.10.01

家にとっても暮らす人にとっても大きな被害をもたらす地震から命や財産や暮らしを守るためにはどうしたらよいのでしょう?


自然災害の中でも地震による住宅の被害は一番といってよいほど大きなものです。
家にとっても暮らす人にとっても、大きな被害をもたらす地震から命や財産や暮らしを守るためにはどうしたらよいかをこれから解説していきます。


地震による建物の倒壊

阪神大震災以降震度7の巨大地震は6回起こり、日本は地震の活動期に入ったとも言われています。
地震は地球を構成するプレートの移動に伴い岩盤がずれる事により発生する現象です。上下左右に振動する地盤の力が建物に伝わり建物自体も3次元に大きく揺さぶられます。建物は人が暮らす空間を確保する為に造り出された箱状の構造物ですが、地震の揺れがこの箱状の構造物に伝わる事で変形を生じさせます。

地震による揺れで建物がゆすぶられる

STEP 01

地震による揺れで建物がゆすぶられる

地震の揺れで壁が平行四辺形に変形する

STEP 02

揺れで壁が平行四辺形に変形する

2階の重さに耐えられなくなり家が倒壊する

STEP 03

2階の重さに耐えられなくなり倒壊する


3階建ては勿論の事、平屋と言っても上の伸びた構造物は、横方向の揺れに対し大きく揺さぶられ、建物正面から見て壁は平行四辺形に変形してしまいます。ある程度の揺れによる変形まではまた元に戻る力が働きますが、それ以上に変形した場合は元に戻る事が出来ず、上階や屋根の重さに耐えられなくなり踏みつぶされるように倒壊してしまいます。家が地震によって倒壊するメカニズムの多くは地震による揺れで建物がゆすぶられ、その結果壁が平行四辺形に変形し上の重さに耐えられなくなり潰れてしまう現象です。過去多くに地震災害で数多くの建物が倒壊し、その下敷きになり多くの人が犠牲になりました。
大きな地震が来てもいかに家が平行四辺形にならないようにするかが地震に強い家を作るポイントと言えるでしょう。

2016年 熊本地震(地震での災害:建物倒壊)

画像:2016年 熊本地震
新耐震基準の建物も倒壊し話題となった。

2007年 新潟中越沖地震(地震での災害:建物倒壊)

画像:2007年 新潟中越沖地震
柏崎市を中心に家屋倒壊や土砂崩れなどの被害。

地震による家具や家財の倒壊

阪神大震災では6400人余りの尊い命が奪われ4万人以上の人が負傷しましたが、負傷された方の46%が家具や家電製品の下敷きとなっています。

地震による家具や家財の倒壊(地震での災害:家具の倒壊)

図:兵庫県南部地震の負傷原因

引用:目黒公朗著 間違いだらけの地震対策内より

家自体が倒壊する事を免れても家具や家電製品が住む人の命を脅かす原因となっています。
家具や家電製品の下敷きとなりけがや命を落された人、家具や家電製品の下敷きになり抜け出す事が出来ず火災に遭った人も数多くおられました。
毎日何気なく使っている家具や家電製品があなたやあなたの家族の命を脅かす凶器となることを再認識すべきであると考えます。


たかが家具、たかが家電家電製品と甘く見ないで日頃から処置を怠らない事が大切です。

<転倒防止の措置の例>

●壁へしっかりと固定する

●転倒防止器具を取り付ける

できれば居間や寝室など人が長時間いるスペースに家具を置くことを避けたいものです。
新築やリフォームの際にはそのようなことも頭に入れ計画を立てることが必要です。

画像:2004年 新潟中越地震(地震での災害:家具の倒壊)

画像:2004年 新潟中越地震 
計測震度計で震度7が観測された最初の地震。川口町の地震計で当時世界最高の2,516ガルを記録。

2次被害としての火災

以前まで「地震だ火を消せ!」という標語が多く見かけられました。大正時代に起こった関東大震災では地震による建物被害より火災による焼死が多かったことから地震を感じたら火災を出さないということを何より第一に実施する為にこの標語が生まれました。
しかし、現在では人が火を消さなくても地震を感じた瞬間にガスが遮断されたり、自動消火装置が働く等して火災被害が起こりにくいよう対策が数多く施されています。
逆にあわてて火を消そうとした人が怪我や火傷を負ってしまう事が後を絶たず、今ではまず地震から身を守る事を最優先にするよう常識は変わりました。

しかし今でも地震による火災は少なからず起こっています。元々火を使わない暮らしをするとか、自動消火装置を備えるなどして火災への備えは今でも大切です。
また、自宅から火を出すことが防げても近隣で発生した火災が延焼する恐れがあります。そんなときとっさに逃げられる体制ができていることも必要です。

家具が倒れてきて下敷きになってしまった、扉が開かなくて外に出る事が出来ない、通路が物でふさがって通れない。といった状態だったら逃げ遅れて焼け死んでしまいます。
地震が治まったらすぐに逃げだせる住まいを作ることも大切です。

地滑り等の土砂災害

巨大地震が起これば少なからず何らかの土砂災害が起こっています。その多くは地滑りやがけ崩れです。
いくら家が頑丈で安全な住まいに住んでいても地盤が崩れてしまったら家は傾き、最悪倒壊してしまいます。又、がけ崩れで土砂が襲ってくれば家はそれに耐える事はほぼ不可能です。
結果、家ごと生き埋めになり命を落とす確率が非常に高まります。
また、仮に地震で家を失っても土地さえ健全であればそこを基盤に復興へと踏み出せますが、地滑りやがけ崩れで住む土地も失ってしまえば復興への基盤を失い生活再建のスードは限りなく落ちてしまいます。こういった意味で土地は住宅より大切な存在であると言えます。

2004年 新潟中越地震

画像:2004年 新潟中越地震
郊外分譲地では盛土の滑動崩落により住宅が多数倒壊。





地滑りやがけ崩れは地震だけでなく大雨でも起こり発生確率の高い災害です。
ただ土砂災害は日本国中どこに住んでいても遭遇する可能性のある地震や台風とは異なり場所を選べば避けられる災害です。
土砂災害から命を守る家を作ることを考える前に、土砂災害にあわない土地に暮らすことが最大の予防策となります。
住む地域についてはこの次の記事で詳しく説明しています。

津波による流出

東日本大震災での津波被害の光景は我々の記憶に深く刻まれおり、その恐ろしさは誰もが知るところだと思います。
あれだけの津波が来れば人間が作り出した構造物など対抗することはできません。まして小規模な住宅はどんなに頑丈に作っても現在の技術で対抗することは難しいです。

2011年 東日本大震災(地震での災害:津波)

画像:2011年 東日本大震災
津波の後の宮城県仙台市の様子





ただ津波も場所を選べば避けられる災害です。標高20m以上の所に住むなどすれば避けることが可能です。
もし20m以下の所に住まざるを得ない場合は、津波に打ち勝つ家を作ろうとするのではなく、津波が来そうになったら家を諦めすぐ逃げる準備を日頃から心がけることが大切です。

地震から身を守るためにできること~土地編~ではどのような土地に住んで身を守るのか解説しています。

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