風水害から住宅を守るために知っておきたい基礎知識シリーズ

風水害と住む地域について【基礎知識2】

2020.04.28

風水害によっては住む地域によって避けられることもあります。

住む地域で避けられない災害と避けられる災害

前回の記事では、風水害の種類と住宅へ及ぼす影響について説明しました。今回は住む地域の話です。風水害の中でも住む地域によって避けられるものと避けられないものがあります。

例えば、風水害の「風」、主に台風ですが、日本に住んでいる限り毎年台風は訪れます。
住む地域で多少の差があったとしても、何かしら被害を受ける可能性があるということを覚悟しなければなりません。


逆に水害や土砂災害は住む地域を選べば、避けられる災害です。内陸部で津波に遭うこと、平地で土石流に遭うことは絶対といってよいほどありません。
今住んでいる地域や場所がどのような特性を持った場所なのか、その地域にはどのような危険性が潜んでいるのか、行政は様々な資料で情報を公表しています。
今回はその公表している資料について今後の土地選びの際や、現状の住まいの地域に潜む危険性を知ることにお役立てください。

●強風被害の可能性のある地域

さきほど、台風などの風は日本のどこにいても避けられないという旨を説明しましたが、土地の風の強さを知ることは可能です。
「基準風速」を見ることです。

基準風速とは、各地方における過去の台風の記録に基づいた風害の程度です。30m/秒から46m/秒までの範囲内で国土交通大臣が定めています。
建築基準法ではこの風速を元に建物の耐風性能を決めるということを義務付けています。
既に建っている建物はこの基準に基づき設計されていますし、今後建てる建物もこの基準で計算されますのでまず安心と考えてもらってよいでしょう。
基準風速一覧表としてインターネットなどで各企業が公表しています。

風水害 被害 地域 基準風速一覧表

基準風速一覧表

他に「風配図」というものがあります。
風廃図とは、ある地点のある期間における、各方位の風向および風速の頻度を表した図です。

風水害 被害 地域

風配図 東京管区気象台より引用



地域毎に風の向きや強さは大きく変わってきます。風の強さや向き、四季毎の風の変化等を知るには風配図がわかりやすいでしょう。
風配図は、間取りや窓の配置を考えるときにも、きっと役に立つことでしょう。

●浸水被害の可能性のある地域

海や大きな川の近くに住んでいる、もしくは住もうとしている方にはぜひハザードマップを見ることをおすすめします。また市街地に住もうとする方も、周囲の中小河川には注意が必要です。ハザードマップを見ることが役に立ちます。全国の自治体で各種ハザードマップが公表されています。

ハザードマップには様々な種類があり、その代表的なものとして洪水ハザードマップがあります。
洪水ハザードマップには内水氾濫、外水氾濫の危険性が有る地域が個別に記載されています。

例として神奈川県横浜市鶴見区のハザードマップを引用します。

風水害 被害 地域 鶴見区ハザードマップ1

横浜市ホームページより画像を引用

風水害 被害 地域

※横浜市ホームページより画像を引用・一部加工

内水氾濫のハザードマップと、外水氾濫のハザードマップです。外水氾濫のハザードマップは、「想定最大規模」と「計画規模」双方の鶴見川浸水想定区域の2種類が掲載されています。
これらのハザードマップも各都市で公表されています。
また高潮に付いては個別にハザードマップが用意されているか、風水害ハザードマップとして洪水と高潮を両方記載している自治体もあります。

例えば、これは兵庫県のCGハザードマップです。

風水害 被害 地域 兵庫県CGハザードマップ

兵庫県CGハザードマップより引用

このハザードマップは左上部のタブで洪水や土砂災害などを切り替えて、エリア別に表示することができます。
これらハザードマップを見ることで、どの地域にどの位の深さまで浸水の可能性があるかを知ることができます。


また同時に避難所の場所も示されていることが多いですのでこれらを見て、日頃から災害時にはどの避難所に行けばよいかを家族で共有しておくことをおすすめします。


あとハザードマップは自分の住んでいる地域だけを見ればいいわけではありません。
避難経路に浸水域として指定されている箇所がないかも確認する必要があります。
浸水域は避難の障害となる危険性が非常に高いからです。

●土砂災害の危険性がある地域

高台や傾斜地など眺めの良い場所に住もうとしている人には土砂災害の危険性がつきまとうということを覚悟してください。
山の端など自然豊かな地域に住む方も同様の危険性があります。


双方の地域とも土砂災害の危険性が非常に高い地域です。住む前にどのくらいの危険性が有るか、調べる必要があります。そういう時に確認していただきたいのが、土砂災害危険地域ハザードマップです。土砂崩れの危険性のあるエリアや土石流の危険性のある河川が示されています。


一般に土砂災害といえば山間部をイメージしますが、横浜や神戸の様な傾斜を持つ地域では市街地にも多く危険個所が存在していますので、注意が必要です。


高潮でもご紹介した兵庫県のCGハザードマップで、神戸市の土砂災害危険地域を見てみましょう。

風水害 被害 地域 兵庫県CGハザードマップ2

兵庫県CGハザードマップより引用・画像を一部加工



ズームで囲っているのは、観光地で有名な北野坂付近です。神戸市でも主要な駅とされる、三ノ宮駅からも徒歩15分くらいです。
そのような市街地でも土砂災害警戒区域に広く指定されているのです。
全国の土砂災害警戒区域の指定個所数は2019年時点で43万か所弱あります。


ここに指定された地域は、文字通り土砂災害の危険性がある地域です。
今住んでいる所、これから住もうとする所の土砂災害の危険性を地域の土砂災害ハザードマップから読み取ってみてください。
また、浸水地域同様に避難経路に土砂災害警戒区域が指定されている箇所がないかも確認する必要しておきましょう。

●津波の被害の危険性がある地域

「窓を開ければ大海原が望める」なんて憧れの暮らし方ですよね。
しかし、それは同時に津波の危険性が高い暮らしであるとも言えることを覚えておきましょう。


東日本大震災までなら海岸線より500mと言われておりましたが。
東日本大震災では仙台平野において5kmまで侵入した事実が報告されています。


海外線より10km以内に住もうとされている方は、ぜひ津波ハザードマップをご確認ください。
津波の浸水深さの他に目標避難地点まで示されています。

風水害 被害 地域 川越町ハザードマップ

三重県三重郡川越町ハザードマップより引用

風水害 被害 地域 川越町ハザードマップ

三重県三重郡川越町ハザードマップより引用

ただ地震の発生地点や大きさで津波の被害は大きく変わってきますので、この数字だけみるのは危険です。
多くの日本の住宅地は津波の危険性のある地域に含まれています。完全に「この地域を避けるべき」とは言えないのが現実です。
ただ地震と異なり、津波は予知できる災害です。危険性のある地域に住んでいるのだという事を自覚して、地震が発生したら直ちに安全な場所に避難することを日頃より心がけておくことが必要です。


ぜひ、これらのハザードマップなどを利用してご自身の住まわれている地域がどのような地域なのか、
災害があった時、どのような被害が想定されるのか調べてみてください。




今回の記事で掲載しているデータなどは下記WEBサイトより引用しております。

<風配図>
東京管区気象台WEBサイト https://www.jma-net.go.jp/tokyo/


<ハザードマップ>
横浜市 ハザードマップ https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/bousai-kyukyu-bohan/bousai-saigai/map/flood-hmap.html
兵庫県CGハザードマップ http://www.hazardmap.pref.hyogo.jp/
川越町ハザードマップ http://www.town.kawagoe.mie.jp/index.php/bousai/bousai/hazardmap/

PAGE TOP