家の健康にまつわる通気と換気の法律

換気や通気に関する法律・基準・決まり【法律・決まり】

2020.11.18

家の健康の観点から「換気」と「通気」に関係する法律についてご紹介します。

「換気や通気で守る人の健康」という記事でも、換気や通気に関する法律をご紹介いたしました。
今回は、家の健康の観点から「換気」と「通気」に関係する法律についてご紹介します。

はじめに

まず、はじめに基礎や壁や屋根は、換気や通気を適切に行い健全性を保たなければ、家の耐久性能や安全性能に関わる重大な問題が発生する箇所です。
ですので、これらの箇所に於いて問題発生に対する防止策が法律や決まりで決められています。


今回は下記の3点をご紹介します。



●建築基準法:日本で建築物を建てる際に必ず守らなければならない法律。


●品確法:これからの住宅のあるべき性能を示唆する法律である「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の中の「性能表示制度」や瑕疵担保責任に関する「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」で示された住宅の設計施工基準。


●住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書や各種業界の標準工法:法律ではないのですが業界の基準とされているものの内、最も影響度が高く普及している「住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書」や「日本窯業外装材協会の外壁通気工法」という標準工法に記された内容をご紹介いたします。これらの標準仕様は木造住宅を建設する際に法律で記されていないが重要な項目について有るべき性能が示しており、多くの住宅を供給している大工・工務店が技術規範として、活用している仕様書です。皆さんの家づくりにも度々登場してくる非常に重要な仕様書ですので覚えておくとよいでしょう。

基礎(床下換気)にまつわる法律・基準・決まり

基礎の部分については、「建築基準法」・「品確法」・「木造住宅工事仕様書」で床下換気について基準が示されています。

●建築基準法

床下換気について建築基準法施行令第22条で

最下階の居室の床が木造である場合における床の高さ及び防湿方法は、次の各号に定めるところによらなければならない。ただし、床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合及び当該最下階の居室の床の構造が、地面から発生する水蒸気によつて腐食しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、この限りでない。


一 床の高さは、直下の地面からその床の上面まで45cm以上とすること。
二 外壁の床下部分には、壁の長さ5m以下ごとに、面積300cm2以上の換気孔を設け、これにねずみの侵入を防ぐための設備をすること。



と記されています。

この換気に関する二について、写真を添えてご説明します。具体的にどういうことかというと写真1と2にある状態です。

換気 通気 法律 :建築基準法における換気口

家の壁長さ5m以下毎の基礎立上り面に約10cm×30cm程度の換気用の穴が空けられています。(当建物では壁の長さが8m程度あるので2か所あります)

換気 通気 法律 :建築基準法における換気口にネット処置

鼠の侵入措置。さらにその穴から鼠等が入らないように格子やネットを付けています。

●品確法

品確法では、建築基準法に対し品確法の劣化対策等級で一番低い等級1では建築基準法と同じ「壁の長さ5mごと」でその内容にかわりがありません。
しかし、より性能の高い等級2,3では、床下換気口の間隔は「4m以下ごと」と規定されており、建築基準法の「5m以下毎に」よりこ短いピッチ換気口を開けることが必要とされています。


どの等級を選ぶかは施主の希望で自由ですが、より性能の高い家を求めるなら等級2以上で建てることをおすすめします。

言い換えれば建築基準法に規定されたピッチ以上の細かな間隔で換気口を開ける方が性能が良くなるということになります。

劣化対策等級については、国土交通省が資料を掲載しています。こちらのリンクをご参考ください。


<評価方法基準案(劣化対策)の各等級に要求される水準の考え方>リンク先はPDFデータです。
<評価方法基準案(劣化対策)の各等級に要求される水準の考え方>

●木造住宅工事仕様書

木造住宅工事仕様書では、外周部の基礎には有効換気面積300cm2以上の床下換気口を間隔4m以内ごとに設ける。とあり、品確法の等級2.3レベルが示されています。
当仕様書でも建築基準法のワンランク上の性能を推奨しています。

●その他の方式<ねこ土台>

ここまでは床下換気の手段について従来からある古典的な床下換気口による換気方式について説明いたしましたが、近年、床下換気口をつける方式は少数派となりました。
以後は床下換気口に変る換気方式について説明していきます。


床下換気のその他の手段については、「建築基準法」・「品確法」・「木造住宅工事仕様書」で床下換気口以外の換気方法が示されています。それは床下換気口に変わる方法としてのネコ土台です。


建築基準法においては「床下をコンクリート、たたきその他これらに類する材料で覆う場合及び当該最下階の居室の床の構造が、地面から発生する水蒸気によつて腐食しないものとして、国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、この限りでない。」との記載事項に該当します。


因みに公庫の木造住宅工事仕様書や品確法の等級2ですと、

イ、外周部の基礎には有効換気面積300cm2以上の床下換気孔を間隔4m以内ごとに設ける。

ロ、ねこ土台を使用する場合は、外周部の土台の全周にわたって、1m当り有効面積75cm2以上の換気孔を設ける。



とあり、イかロのいずれかを行う必要があります。


ネコ土台とは基礎上部と土台の間に2cmぐらいの厚さのパッキンを挟み隙間を作り出し、その隙間部分を換気口とする方式です。5mピッチや4mピッチといった限られた部分で換気するのではなく、基礎周囲のほぼ全体で換気する方式である為に「全周換気」と呼ばれ、換気効率の高い方法とされています。

換気 通気 法律:キソパッキング工法

その基準は壁長さ1m当たり75cm2以上の有効換気面積を持つ換気口ですので、品確法の等級2や公庫の木造住宅工事仕様書にある4m以内に300mm以上の換気口の基準を満たした大きさとなっています
法律や基準を読むと床下換気口の表記が目立ちますが、現在の住宅ではネコ土台方式が大多数を占めるようになりました。そのため、現在作られる多くの住宅の基礎周りを見ても換気口を見つける事は稀にしかなくなりました。どちらの方式も基準を満足する上、いずれも性能は確保しているのでどちらの方式であっても問題ありません。


ではなぜネコ土台が近年急速に普及したかといいますと、換気性能についてだけではなく、基礎の強度に関係しているからです。コンクリートは固まるに従い水分を放散すると共に若干の収縮が発生します。その折、コンクリート面に穴などが空いていると穴の周囲から微小なヒビ割れが入る恐れが有ります。また、穴を開ける為に鉄筋の補強が必要になったりして手間が掛ることになります。また、換気にムラが生じて湿気がこもりシロアリ被害のリスクも高まります。

換気 通気 法律:換気口の場合
換気 通気 法律 : キソパッキング工法の場合

しっかりした管理や設計を行っていれば何ら問題の無いことですが、少しでも危険性を減らしたい。手間を減らしたい。と考える住宅会社は基礎面に穴を開けないネコ土台方式を選ぶことになりその結果普及が進みました。さらに近年は大雨による洪水が多発していますが、基礎の換気口から増水した泥水等が基礎内に侵水する恐れが有ります。ネコ土台を使用すればほんの少しの高さの差ですが基礎内への浸水を防ぐことができるという点も見直されています。




<基礎の換気についての法律まとめ>
基礎の換気についてまとめますと、より高い性能を求め長持ちする家を作ろうとするならば床下換気については「木造住宅工事仕様書」や「品確法」の2.3等級で示された換気量を確保することを選びましょう。その折、床下換気口を採用するのかネコ土台を採用するのかは換気量に差は有りませんが、基礎のヒビ割れリスクや施工効率の他、複雑な間取りの住宅の場合等では全周換気であるネコ土台の方が換気ムラが無く、シロアリ被害リスクを考えると有利かもしれません。

屋根の通気と換気にまつわる法律・基準・決まり

次に屋根や小屋裏の通気と換気にまつわる基準に関する法律ですが、建築基準法では何も規定されていません。
しかし、品確法と木造住宅工事仕様書などの仕様書には規定や説明があります。屋根は家の耐久性能に関わる重要な個所なので多くの住宅会社は法律には決まりはなくても、これらの規定に従う事が常識化しています。では品確法から見ていきましょう。

●品確法

品確法における「劣化軽減措置」の等級3.2に、小屋裏換気の仕様が評価基準として示されています。これらは住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」に記された小屋裏の換気必要面積の最低基準と同一です。換気方法には、棟換気・妻換気・軒裏換気などの組合せにより小屋裏の天井面積に対して、必要となる吸気口及び排気口の有効換気面積が示されています。詳しい内容は下に記します。

品確法における「劣化軽減措置」の等級3.2に、小屋裏換気の仕様が評価基準として示されています。これらは住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」に記された小屋裏の換気必要面積の最低基準と同一です。換気方法には、棟換気・妻換気・軒裏換気などの組合せにより小屋裏の天井面積に対して、必要となる吸気口及び排気口の有効換気面積が示されています。詳しい内容は下に記します。

●木造住宅工事仕様書

木造住宅工事仕様書においてフラット35の融資条件となっており、また夏場の室内の温度環境を涼しく保ち、冬場の小屋裏の結露を防止することにもつながるため、現在はスタンダードな仕様となっています。
屋根の換気に関しては、天井面で断熱する場合屋根面に断熱材を施工する場合に分けて、それぞれ別個の基準があります。


<天井面で断熱した場合:小屋裏換気>


天井面で断熱を行った場合に必要となる小屋裏換気の基準は下記の通りです。
屋根形状やそれに伴う小屋裏換気の方式毎に、屋根面積に応じた一定量の換気面積が求められています。
屋根形状や小屋裏換気口の取り方毎に求められる量は異なりますので、下記の図をご参照ください。

換気 通気 法律 : 小屋裏換気

<屋根面に断熱材を施工する場合>


屋根断熱を行った場合に必要となる屋根通気の基準は下記の通りです。
仕様書では


天井面ではなく屋根面に断熱材を施工する場合には小屋裏換気口は要さないが、(中略)耐久性上支障が出ない措置を講じておく必要がある。


1.断熱材の外側には通気層(厚さ30mm程度)を設け、必要に応じ断熱材と通気層の間に防風層を設ける。

2.断熱材の室内側には、防湿材によって防湿層を施工する事、室内の水蒸気が屋根内部に侵入しないようにする。

3.天井を張ることにより密閉した天井ふところが有る場合には、屋根構成部材について点検が可能となる点検口を設けておく。

つまり、屋根断熱材の上部に30mm程度の通気層を作る事、断熱材の室内側に防湿層を作り室内で発生した湿気を断熱材に入れないこと。密閉された小屋裏空間が出来た場合には、その屋根の構造体を点検できる点検口を作ること。とあります。



小屋裏換気と異なり屋根形状や換気方式での違いはない上に、屋根面積に応じた換気面積でもなく、ただ「断熱材の外側に30mmの通気層を作る」というシンプルなものとなっています。

換気 通気 法律 : 屋根通気

<屋根の換気についての決まりまとめ>


屋根面で断熱を行うか、天井面で断熱を行うかで換気の方式や求められる数値が大きく異なります。
どちらの方式が良いということではなく、それぞれの方式は今から作る家の間取りや空間の作り方(特に2階の天井面の活用方法)と密接な関係があります。
それらの空間に最適な断熱方法を選ぶ必要があり、その断熱方式に応じた換気や通気の基準に従う必要があります。

壁の通気と換気にまつわる法律・基準・決まり

壁の通気と換気にまつわる法律ですが、建築基準法では記載がありません。
品確法と木造住宅工事仕様書などの仕様書、業界団体の標準工法に説明がありますのでご紹介します。

●品確法

品確法における性能表示制度の「劣化対策等級」の等級2.3に、 通気構造等に該当するものとあります。
通気構造とは、壁体内に通気経路を設けた構造で、外壁仕上げと軸組等の間に中空層を設けるなど、軸組等が雨水に接触することを防止するための有効な措置が行われているものを指します。


また、品確法上の瑕疵担保責任において住宅購入者等の利益の保護を図るため、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が有ります。ここでは新築住宅の売主等に対しての瑕疵担保責任を履行するための、保証金の供託もしくは保険への加入による資力確保が義務付けられ、保険加入のための設計施工基準でサイディングなどの乾式の外壁仕上げとする場合は、通気構法とするという事が条件となっています。

●木造住宅工事仕様書・日本窯業外装材協会の構法

木造住宅工事仕様書には、「住宅の外壁については、乾式または湿式いずれの仕上方法であっても、外壁内通気措置を施す事が防水上有効である」との記載があります。

サイディング外装材を使用する場合でも、モルタル塗りする場合でも構造体との間に通気層を作ることが防水性能を担保するには有効であるということです
また、日本窯業外装材協会では外装材内側と断熱材との間に通気層を設ける「外壁通気構法」を全国標準工法としています。


<外壁通気構法とは>
外壁材の裏面に空気の通り道を作ることで湿気を放出・乾燥させ、結露の防止し住宅の耐久性と快適性の向上に寄与する工法です。

換気 通気 法律:外壁通気構法

<外壁通気構法のメリット>

(1) 室内で発生し、壁体内に滲入した湿気を壁の外に排出することにより、壁体内の乾燥を保ち、結露を防ぎ、家を長持ちさせます。

(2) 外壁のすき間等から浸入した雨水を、壁体内に浸入させずに屋外に排出します。

(3) 通気層による遮熱効果により外気温の影響を少なくし、省エネになります等の大きな利点が生まれます。



近年、土地が狭いことやモダンデザインが流行っている事で軒の出が少ない住宅が多くなりました。長い軒の出は雨が外壁にかかる事を防いできましたが軒の出が短くなった事で外壁の負担は大きくなりました。法律では定められていませんが外壁通気工法はこれからの住宅には不可欠な工法であると言えます。

さいごに

いかがでしょうか?住宅を建築する際に最も重要な法律は、「建築基準法」ですが、木造住宅の建設に必要な技術や基準が全て載っている訳ではありません。建築基準法に記載がなくても品確法や木造住宅工事仕様書、業界の標準工法等重要な事は数多くあります。
良い住宅会社とは、これらの重要な情報をしっかりと理解し、異なる様々な住宅に最適で不可欠な工法を適格に取り入れることが出来る知識や経験豊かな会社だと言っても良いでしょう。
建築基準法はあくまでも最低限、長持ち住まいを建てるために、品確法や木造建築基準書、業界の標準工法等他の法律や仕様書に皆さまも目をむけてみるといいかもしれません。

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