長持ち住まいを実現するために知っておきたい基礎知識シリーズ

住宅の定期メンテナンス【基礎知識3】

2020.03.12

住宅の定期メンテナンスも、定期点検と長持ち住まいを実現するために必要です。

住宅会社や建材会社のメンテナンス体制

住宅は様々な建材や機器の集合体です。これら構成する建材や機器には自ずと寿命が存在します。
建材や機器によって製品寿命やメンテナンスの時期が異なります。

機器類は1〜2年、建材で8〜10年ぐらいで、それぞれ時期に応じ定期的に交換やメンテナンスを確実に行っていくことが大切です。
住宅のメンテナンスはもちろん住む人だけでは行うことができません。住宅会社や住宅に使用されている建材の建材会社が関わってきます。
では、住宅会社や建材会社のメンテナンス体制はどうなっているのでしょうか。

●住宅会社のメンテナンス体制

住宅会社は住宅品質確保促進法により新築した住宅の基本構造部分で、完成引き渡し後から10年間なんらかの瑕疵が見つかれば、無料補修する事が義務づけられています。

その為、今では10年保証が常識化しましたが、さらに性能に自信のある住宅会社では、ある一定の条件付きで30年保証や60年保証を行う会社が出てきました。

しかし保証といっても何もせずに30年間や60年間の保証をするというのではなく、前記事でご紹介した定期点検を行うことを条件として保証を行うケースが多いです。

●建材会社のメンテナンス体制

住宅会社が行うメンテナンスや保証以外に、各建材メーカーが提供した建材の果たす役割に対して、保証を行っている事があります。

例えば屋根材や外壁材メーカーは屋根材や外壁材の基本性能に係る事項に対し、保証を行っています。
防蟻処理メーカーでは防蟻被害に対し一定期間の保証を行っています。

それらほとんどの保証に対しても保証期間内で何の点検やメンテナンス無く保証するという物は無く、定期的なメンテナンスを行う事を条件とするものがほとんどです。


このことから、日頃からのメンテナンスや点検や性能保持を行うことが非常に重要です。

住宅の定期メンテナンス

住宅の定期メンテナンスは、重要な箇所である屋根外壁や、シロアリや腐れに関することは特に問題の発生がなくても必要です。

●外壁・屋根の定期メンテナンス

外壁や屋根は過酷な自然環境にさらされています。外壁や屋根材のほとんどはセメント系の物質でできています。
一般的に耐久性が高いと考えられている鉄筋コンクリートでも耐久年数は一般的に60年と言われ、その耐久性を維持するために表面に塗装がされています。外壁や屋根材も同様に表面に塗装がされています。
近年、その塗料の耐久年数が技術の進歩により30年保証という商品も出てきました。

しかし、まだまだ多くの外壁や屋根は、耐久年数10〜15年で塗り替えが必要です。
また、最近は金属系の屋根も増えてきています。金属の種類によりますが、金属の塗装に関しても同様に10年程度で塗り替えが必要です。
窓周りやサイディングの継ぎ目にある、コーキングの寿命はさらに短く8年程度です。


これらの耐力年数をまとめた表が以下のものです。


住宅の定期メンテナンス:住宅の建材の耐力年数


外壁や屋根材は10年目と20年目に塗り替えを行い、30年目には外壁材や屋根材の交換をした方が良いとされています。
そのため原則的には10年、耐久性の高い塗装でも15年に一度足場を掛けて、外壁や屋根の再塗装、金属部再塗装、コーキングの打ち替え、下地のチェックを行うことが必要です。

これを怠ると表面材の劣化箇所から雨水が侵入し、下の防水層に達して、場合によってはその下まで浸潤し構造体を腐らしてしまいます。
そうなれば構造強度が低下することは当然のこと、カビの発生などにより健康被害が起こります。
また、断熱材が水を吸い込むことで断熱性能も低下します。


マンションなどで修繕積立金があるように、戸建て住宅でも10年に一度再塗装しなければいけないことを必須と考えて、その費用を準備しておかなければなりません。

●メンテナンスサイクルという考え方

これから家づくりや大掛かりなリフォームを行おうと考えられている方にぜひ覚えておいて頂きたいことがあります。それは「メンテナンスサイクル」という考え方です。


長期にわたり過酷な環境にさらされる屋根や、壁や樋など外部の仕様を決める際にぜひ活用して頂きたい考え方です。前記したように屋根や外壁や樋等は定期的に塗替えや交換を必要とします。
の折に必ず必要となるのが「足場」です。安全な作業を行う為には足場が必要です。

労働衛生上、足場を省く事は法律違反です。
さらに重要な事は作業員の生命にかかわる問題と直結します。足場を組むことは決して省く事が出来ない工程です。


小規模な住宅であっても1軒の家に足場を架けるには5人程度の人が1日以上かかります。また、半月以上の工事期間中人を借りていなければなりません。工事終了後の足場の解体も1日掛ります。
その為の費用は数十万円単位となり、工事全体に占める割合も無視できない大きさとなります。しかし、足場にかけた費用の価値は家には残りません。


覚えておきたいのは「外壁工事だけ」であっても「屋根工事だけ」でも足場が必要です。


住宅の定期メンテナンス:足場


ここからがこの段落のポイントです。今回は外壁と屋根に限って説明します。
下記の図を見てください。2つのパターンを用意して比べてみました。


住宅の定期メンテナンス:メンテナンスサイクル


パターン1は、もし外壁を選ぶ際に15年間再塗装がいらない高性能なものが良いと考え選んだとします。
屋根は「何処からも見えないから普通でいいんじゃない」と言って、10年で再塗装が必要な一般品を選んだとします。そうした場合30年後に全交換の大規模補修をするまでに、途中何回再塗装工事を行うか考えてみましょう。


まず10年目に屋根の再塗装工事を行います。そしてその5年後に外壁の再塗装工事が来ます。そしてその5年後20年目に2回目の屋根の再塗装工事がまた来ます。そしてその10年後の30年目を迎えます。
パターン1では再塗装工事の回数は全部で3回です。1回の足場費用が30万円だとしたら合計で90万円です。

パターン2は、仮に外壁を高級な物を使わず10年毎に塗り替えが必要な一般品を使った場合です。

パターン2であれば、屋根材と同じ時期である10年目と20年目の2回足場を掛ければ済む事になり、足場費用は60万円で済みます。



確かに高級な15年持つ塗装の方が、塗装工事が30年間で2回ですが、先程も書きました様に工事費に占める足場代が高いので、初期の外壁代と30年間の塗装費用を足すと総額で損になってしまう事が多くあります。
足場がかかっている間の暮らしはとても鬱陶しいものです。窓は閉めっぱなしにしなければいけないし、洗濯物や布団干しも思うようにできません。
さらに足場を伝い侵入盗の危険性も上がります。

足場を掛ける回数は極力減らすことが、メンテナンス費用の軽減にも、生活のストレスにも優しいことです。

メンテナンス時期を無視し10年で再塗装する必要の物を15年間放置すれば雨漏り事故の危険性は非常に高くなります。
15年もつものをせっかく選んだのに10年目に交換するのはもったいないです。10年サイクルなら10年サイクル品で揃える。
15年サイクルで行くなら屋根も外壁も15年サイクルで揃える事が重要です。
外部に於いてメンテナンスサイクルを考える必要があるものは、


●外壁材

●屋根材 

●樋材 

●外部コーキング

●水切り等の板金部材

です。

今後家との付き合いは数十年にわたって続きます。その間に定期的なメンテナンスは必ず必要です。その費用とその間のストレスを少しでも減らすよう、新築時の仕様決めの際にはメンテナンスサイクルを揃え合理的にメンテナンスを行う計画を建てる事が大切です。

●シロアリ対策処理の定期メンテナンス

現在シロアリは日本中どこにでも生息しており、枯れた樹木が自然に還り栄養素となることを助けています。
しかし、自然界に必要なシロアリは時として人間の生活の脅威となります。


現在の住宅はシロアリの被害に遭わないよう、土壌を始め土台や柱の下1m部分に薬剤を塗っています。それによりシロアリが近づくことなく安全が確保されています。

しかし、その薬効には期限があります。一般的に5〜10年で再処理が必要とされています。
これを怠るとたちまちシロアリが食料を求めてやってきて、大切な住宅を自然に返そうとします。
こうならないためにも5〜10年で再処理を行い、薬効を継続する必要があります。


今では、薬剤に頼らないシロアリ対策工法もあります。薬剤に頼らないシロアリ対策工法であっても、プロによる定期的な状況確認は欠かせないのは薬剤と同じです。


住宅の定期メンテナンス:蟻害の写真


これは玄関の框部分がシロアリの食害にあった写真です。シロアリ被害は知らない間に進んでいます。

たかが蟻とタカをくくっていると、土台や柱が食べられて中規模の地震でも倒壊などの大きな被害となり、住む人の命を脅かします。
阪神大震災では多くの建物が倒壊しましたが、その多くは土台や柱に蟻害がありそれが原因とされています。

シロアリ対策処理の定期メンテナンスも、決して侮ることがないようにしたいものです。

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