暖かい長持ち住まいをめざして

基礎断熱と床断熱の違いとメリット・デメリット【基礎知識】

2021.01.12

基礎断熱と床断熱の違いとメリットとデメリットについてご説明いたします。

この記事は約10分で読めます。

はじめに ~床断熱・基礎断熱って家づくりでよく聞きます~

みなさん、家づくりをする際に一度は家の仕様で「床断熱」・「基礎断熱」というワードを耳にすることはありませんか?当WEBサイトでも断熱について書かれた記事は3記事あります。
近年、地球温暖化対策や健康に対する関心から住宅の高気密・高断熱化が新築時の重大な要素となってきています。断熱は家の暖かさにも直結するため、皆さんの関心は高いのではないでしょうか。


しかし、住宅の高気密・高断熱化については断熱だけとってみても「充填断熱」と「外張り断熱」など手法がいろいろあり、また断熱材の種類についても「グラスウール」や「フォーム」など様々です。そして、その性能を現す基準はUA値やηA値等という難解な単位で表されて、こちらを理解するのも一苦労といったところではないでしょうか。


そして、今回のテーマである「基礎断熱」「床断熱」
他の「屋根断熱」や「壁断熱」はその部位に対しての断熱仕様を考えればいいだけでしたが、基礎の立ちあがり部については「基礎断熱」「床断熱」と全く違う工法が2つ存在します。


そしてこの基礎の断熱については、全館空調と関連が深く、こういった仕様を検討することでかかわりの多い部分となります。また、基礎は地面との距離が近いためシロアリ被害についても考えなければいけません。


今回、基礎の断熱工法や各工法のメリット・デメリットを知ることで、住宅の仕様で基礎の断熱工法が決まった際にリスクがあれば対策を講じることもできます。長くなりますが、一緒に学びましょう。

基礎と断熱の関係と床断熱・基礎断熱の役割

日本の建築は、地面に穴を掘りそこに柱を建てる掘立と呼ばれる住居から始まり、床下の湿気と白蟻被害との戦いで進化してきたという歴史があります。
床下を湿気やシロアリ被害から守る効果的な術として床下は常に外気が入れ替わる「外気空間」であることが求められてきました。


一方、断熱については住宅の断熱の歴史は非常に短いです。現在においても建築基準法で断熱については義務化されていません。昔は、家を断熱するという考えはありませんでした。寒さを感じれば囲炉裏や炬燵、近年ではストーブの周りに人が集まり暖を採る。もしくは衣服を着込むことが当たり前の暮らし方でした。


部屋全体・家全体を暖めるという考え方はつい最近の断熱手法からです。
家全体から逃げていく熱のうち、床面から逃げる熱の量は意外に大きく全体の10%に及びます。この熱を逃がさないようにするのが床断熱や基礎断熱の役割です。


次の項目からは、初めに誕生した「床断熱」から説明していきます。

床断熱について メリット・デメリット

部屋全体を暖めるには床、天井、壁、窓に断熱性能を持たす必要があります。

今回のテーマである床に対しての断熱で、最初に考えられたのが床断熱です。


床断熱は、床面で断熱をして、床下空間は「外」とする断熱方法です。

床断熱 基礎断熱:床断熱

過去の歴史から見て床下の換気は必須であり、外気を循環させる「外気空間」である必要があります。
活空間との「境目」である床は断熱しないと外気が室内に入り込み夏は暑く、冬は寒くなります。
床面を断熱する「床断熱」は今でも主流となっています。こういったところからメリットは以下の通りです。


<床断熱のメリット>

〇長く普及してきた断熱方法なので、技術が確立されており、安定した品質が期待出来る
〇床下の環境が外気空間であり、換気が効率的に行えるのでしろありの発生や湿気による腐食も少なく安心

一方、床断熱にもデメリットはあります。
その1つに挙げられるのが、「断熱材の厚さの上限」です。
床面を断熱するには床の厚さの中に断熱材を入れるのが基本です。
しかし、床の厚さには限界が有り現在の多くの住宅の床の厚さは105mmもしくは120mmが一般的です。
様々な手法がありますが、一般的には断熱材の厚さの上限=床の厚さとなります。

さらに、床は根太とか大引きといった構造耐力を担う部材がグリッド状に配置されています。
それらを避けながら断熱材を入れていかなければならないこと、その根太や大引きが木材であり、断熱材以下の断熱性能しか持ち得ていないことから断熱性能には上限が出てしまいます。

そして断熱性能を有効に働かせるためには気密が重要となりますが、これら構造部材とそれらを避けながら断熱材を充填するという複雑な施工により気密性能にも限界が出てきます。
非常に高い断熱気密性能を得ようとした場合に、床断熱では限界があるのです。

床断熱 基礎断熱:床断熱のデメリット

<床断熱のデメリット>
〇断熱材の厚みに限界があり、また構造部材は木材のため断熱性能に上限がある。

〇構造部材を避けて断熱を行うため、複雑な施工となり、気密性能向上は高い技術が必要となる。

基礎断熱について:基礎外断熱のメリット・デメリット

床断熱よりも高い断熱・気密性能を得ようと考えられたのが基礎断熱です。基礎断熱の場合、床下空間は「室内扱い」となります。
基礎断熱には2つ工法があります。「基礎外断熱」「基礎内断熱」です。


基礎外断熱は、基礎の外側を断熱材でぐるっと包み込んだ工法です。
床断熱のように、根太や大引きの間に断熱材を詰めてその隙間を埋めるより、簡単な施工だと考えたのです。

床断熱 基礎断熱:基礎外断熱

<基礎外断熱のメリット>

〇床断熱と違い、断熱材の厚みを増やせること

〇床断熱に比べて気密施工が容易であること

床断熱 基礎断熱:基礎外断熱

しかし基礎外断熱には見過ごせない2つの課題・デメリットがあります。


<基礎外断熱の課題・デメリット>

〇基礎内の換気経路の取り方により人又は家の健康が損なわれる可能性が有る。

〇シロアリ被害。断熱材と基礎との間に隙間が有った場合はそこを通り道として発見しずらい。



床下の換気については換気扇等の機械換気を使い室内の空気と共に循環させるのが一般的で、機械換気無くして基礎断熱を成立させる事は出来ません。換気を怠ると、床下空間はコンクリートの水分などでカビや結露が発生する恐れがあるからです。


また、断熱材と基礎の隙間はシロアリ被害が多い箇所です。
シロアリは風の無い暗い空間を最も好みます。基礎の外側に貼った断熱材とコンクリートの隙間は暖かく暗く風の無い最も快適な空間であります。
ホウ酸処理等をした物質はシロアリに対して食毒としての効果がありますが、基礎の外側に貼られた断熱材にいくら殺虫効果が有っても基礎のコンクリート面との隙間があればその隙間がシロアリにとって快適な生存空間となり、シロアリの性質上、上へ上へと上がります。そして建物の躯体を食べるのです。


家全体を断熱材に包み込んでいるためにシロアリの経路も発見できず、気が付いたら家中がシロアリ被害を受けていたという悲劇は実際に起こっています。

床断熱 基礎断熱:シロアリ被害の様子

その為に、この基礎外断熱はシロアリ被害が少ない北海道などの寒冷地に於いて、様々なシロアリ対策が施されながら注意深く実施されているというのが一般的となりました。

基礎断熱について:基礎内断熱のメリット・デメリット

基礎外断熱で起こってしまうシロアリ被害を防ぎながら基礎断熱の良さを生かそうと開発されたのが基礎内断熱です。基礎内断熱工法とは、基礎の外側ではなく内側に断熱材を貼る工法のことです。

床断熱 基礎断熱:基礎内断熱

<基礎内断熱のメリット>

〇断熱材厚をいくらでも増やすことが出来る

〇断熱施工や気密処理は住宅の外回り部分に集中して行えばよい



このようなメリットから、基礎内断熱はシロアリが生息している本州以南で基礎断熱を行う場合のスタンダードな施工方法となりました。

ただ、基礎内断熱にも課題やデメリットはあります。

<基礎内断熱の課題・デメリット>

〇基礎内の換気経路の取り方により人又は家の健康が損なわれる可能性がある。

〇複雑な断熱材貼り工事が必要

床断熱 基礎断熱:基礎内断熱のデメリット

基礎内断熱でも基礎外断熱と同様に床下の換気は必須です。床下は室内空間であるからです。
基礎外断熱同様に換気扇等の機械換気を使い室内の空気と共に循環させることが必要となります。

複雑な断熱材貼り工事については、基礎内は基礎外に比べ内側に伸びる基礎が何本も走り、その立ち上がりが外部の熱を内部に伝える「熱橋」となってしまいます。外周りの立上りと内回りの立上りを切り離す事は構造上不可能で、内周りの立上り基礎にも断熱を施さねばならないことになり、これが複雑な施工となります。

基礎断熱工法における共通のメリット

基礎外断熱、基礎内断熱の簡単な説明とメリット・デメリットを説明してきましたが、共通の「基礎断熱工法」を選択するメリットについて説明します。断熱性能を高める以外にもメリットはあるんです。

〇基礎断熱工法のメリット:変化の少ない地熱

床断熱をした場合、床下は換気の為に外気を取入れることで外部空間となります。
そのため、夏暑く冬寒い外部環境に対し、床面全体で断熱材が対抗する事になります。仮に8m角の正方形の家ならば64㎡の床面が外部環境に晒され断熱性を保持しなければなりません。

床断熱 基礎断熱:床断熱の場合

一方、基礎断熱で有れば同じ8m角の家で基礎高さが45cmとして8m×4面で14.4m2の基礎面を断熱すれば断熱は完了します。さらに建物直下の地盤面は断熱材に守られて、ほぼ1年間を通じ15度前後を保持されています。その年間を通じ変化の少ない地熱が「冬の寒さへの対策」と「夏の涼しさへの対策」として有効に働いてくれます。

●基礎断熱工法のメリット:地熱と熱容量を生かした全館空調

熱容量とは1K(あるいは1℃)上昇させるのに必要な熱量です。熱容量が大きいという事は一度暖まると冷めにくいといえます。
本来、木造住宅は木を主体に作られており、使われる素材は熱容量のあまり高くない素材が占めています。いわば直ぐ温まりすぐ冷める建物といえます。


一方コンクリート住宅はコンクリート自体熱容量が高くそれが多く使われるので熱容量が高く、いわば温まりにくいけど冷めにくい建物と言えます。


基礎にはコンクリートが使われており、熱容量の少ない木造住宅に於いて貴重な熱容量の高い素材で、使われる面積も床一面に広がっています。
この熱容量を活かす方法が基礎断熱工法にはあるのです。
それは、床下にエアコンを設置し、基礎内を暖める(冷やす)を行い、その熱を全館に循環させ全館冷暖房を行おうとする、いわゆる「全館空調」です。
寒く(暑く)なったらON,快適になったらOFFを繰り返すのではなく、年間を通じ「ちょろちょろ」とエアコンを稼働させるだけで蓄熱効果で快適な室内環境を作り出す理想の住まい造りが可能となります。
年間を通じて一定の地熱がそれを助けてくれますので効果は非常に高いです。

基礎断熱工法における共通のデメリット

基礎断熱工法の共通のデメリットは、床下の空気か室内へ循環することです。
新築直後のコンクリートからは大量の水蒸気が発生しコンクリート臭も発生します。また構造材も様々な化学処理が行われた部材であればその部材から様々な物質が蒸散します。
これらが床下から発生し、室内へと循環します。住んでいるものとしては気持ちがいいものではありません。また、うまく循環できなかったり、上部で人が生活する事で床下には湿気や汚れた空気が床下溜まります。それらを排出しなければカビや腐食の温床となります。
その為に家と人、双方の健康を害さない適切な換気方法が求められます。

さいごに

住宅の技術とは様々な部位に対する施工や、様々な性能に対する処置が複雑に絡み合いながら、ベストミックスを作り上げていく作業です。今回は1階床面の断熱についてのみフォーカスしてお話ししましたが、本来その他の部位やその他の技術との関連性も考えながらベストミックスを考えなければなりません。


家づくりガイドを運営している城東テクノ株式会社では、基礎断熱工法でも床下換気を実現する
「Joto基礎断熱方法」を確立しています。
また、指定部材を使用することで竣工後10年以内のシロアリ被害発生に対し累計1,000万円を補償する「しろあり保証1000Joto基礎断熱工法」もございます。

しろあり保証


こちらは住宅会社が登録する保証となっていますので、家づくりをされている皆さんは、ぜひ
住宅会社さんへ聞いてみてください。

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