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水害リスクの説明義務化へ。宅地建物取引業法が改訂【ニュース】
2020年8月28日より宅地建物取引業法(宅建業法)が改正され、水害リスク説明が義務化されました。
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宅地建物取引業法(宅建業法)が改正された経緯
ここ数年、記録的大雨とそれに続く河川の氾濫位よる浸水被害が毎年のように起こっています。
2020年で例に挙げますと、「令和2年7月豪雨」が記憶に新しいかもしれません。
7月3日から31日までの29日間にわたり、日本上空に前線が停滞して、多くの住宅で浸水被害が出る記録的な大雨となってしまいました。
2020年度8月初旬の段階で、全国で82人の方が亡くなられ、住宅被害は34府県で17000棟超に及びました。
もう可能性として考えられてきた地球温暖化による気象の激化は現実のものとなり、毎年のように私たちの暮らしを脅かしています。
もう「50年に一度の記録的な大雨」は「数年に一度」いや、「年に1度もしくはそれ以上」頻繁に起こるようになっているのです。
このような気象の激化に対し、法律の改正が行われることとなりました。
その目的は、住み始める前から危険性や避難場所を把握してもらい、逃げ遅れを防ぐためです。
法律の改正内容を知ろう~住宅購入など契約前に水害リスクを説明義務化って?~
まずは宅地建物取引業法(宅建業法)改正内容を確認していきましょう。
こちらは国土交通省WEBサイトより引用しています。
(1)宅地建物取引業法施行規則について
宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)においては、宅地又は建物の購入者等に不測の損害が生じることを防止するため、宅地建物取引業者に対し、重要事項説明として、契約を締結するかどうかの判断に多大な影響を及ぼす重要な事項について、購入者等に対して事前に説明することを義務づけていますが、今般、重要事項説明の対象項目として、水防法(昭和24年法律193号)の規定に基づき作成された水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を追加します。(2)宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(ガイドライン)について
上記(1)の改正に合わせ、具体的な説明方法等を明確化するために、以下の内容等を追加します。
・水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
・市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
・ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
・対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
<これらを簡単に要約すると>
(1)もともと宅地建物取引業法では、契約を結ぶかどうかの判断に影響する「重要事項」は事前説明が義務付けられているが、今回、関係省令を改正して「重要事項説明の項目」に水害リスクを盛り込んだ。
(2)それにより、2020年8月28日からは不動産業者は自治体が作成している水害ハザードマップを活用して、物件の位置や浸水のリスクなどを顧客に説明しなければならない。近隣にある避難所の場所も伝えてもらう。
情報を補足いたしますと、これまで土砂災害や津波のリスクは重要事項説明の項目に入っていました。
今回そこに、近年の想定外の浸水被害をうけて、「水害リスク」が加わったわけです。
この法律の改正で、家づくりをこれから検討されている皆さんは、
「この法律が改正されたことで家を作る際には、建築業者が施主である私たちに水害のリスクやその対策方法を教えてくれるんだな」
「その土地に住むことになった場合、住宅メーカーが必要な注意点を教えてくれるんだな」
「義務なので必ず教えてくれるんだな」
と感じるのではないでしょうか?しかし本当にそうなのでしょうか?
住宅会社や工務店と「聞いてない」や、「いう必要がない」などでトラブルにならないためにもまず、「宅地建物取引法」がどんな法律で、「購入者等に対して」が誰のことを指し、どのタイミングで説明を受けるのかを理解しましょう。
正しく知ろう、今回の「水害リスクの説明義務化」
●そもそも「宅地建物取引法(宅建業法)」とはどんな法律?
宅地建物取引法とは免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことによって、
・宅地建物取引業を営むものの業務の適正な運営を図る
・宅地・建物の取引の公正を確保する
・宅地建物取引業の健全な発達を促進する
以上の3点を目的とし、最終的には宅地・建物を購入しようとする者等が被る恐れのある損害を防止し、その利益を保護するとともに、宅地・建物が円滑に流通することを目的としている法律です。
つまり、賃貸住宅の契約や不動産の仲介取引を行う際に関係する法律です。
●「水害リスクの説明をする」のは誰から誰のことを指すのか考えよう
「家を建てる・購入するのだから、説明されると決まっているでしょう」とお思いかもしれません。
家づくりを行うまでの流れは様々です。
・すでに以前からの土地を所有していてそこの家を建てることを考えている人
・今から土地を探してそこに家を建てようとしている人
・今の家を取り壊して建て替えようとしている人
など、これら様々なアプローチから家つくりを行おうと考えている人すべてがこの法律と出会う機会があるのでしょうか。
答えは×です。
この法律でいう、「水害リスクの説明をされる」場合は、
●賃貸住宅を借りる場合や、仲介の不動産を購入する場合に「不動産屋さん」と言われる不動産仲介業者を通じて(住宅会社・工務店含む?)土地の購入を行う場合
●土地分譲業者や建売住宅業者から土地または土地と家を買う場合
に限られます。
つまりこの法律は「土地の売買時に、土地の所有者(売り主)から借り手・買主に対して、水害リスクを含む重要事項を説明する義務がある」ということです。
また、新築を行う際に建築士から受ける「建築士法に基づく重要事項説明」とは言葉が同じ「重要事項説明」ですが、内容や根拠になる法律は異なります。紛らわしいので注意が必要です。
ケースで解説!「水害リスクの説明義務化」この場合は誰から誰に説明する?
具体的な例を見ていきましょう。
●賃貸住宅を借りる場合・・・土地・建物ともに所有者から借り手に説明義務があります。
●新築の建売を購入した場合・・・土地+建物がセットですので、販売する住宅会社や工務店から買主へ説明義務があります。
●土地を買い、注文住宅を依頼する場合・・・この場合は、土地を販売した業者から買主へ説明義務があります。建てる住宅会社や工務店には説明義務はありません。
●売り建て住宅の場合・・・この場合も土地を買った業者から買主に説明義務があります。建てる業者も同じである場合は問題ありませんが、建てる業者が変わる場合は建てる業者には説明義務はありません。
このような場合は、法律を介することがなく、説明義務は誰にも生じません。
●ご自身ですでに土地をお持ちの場合
●古い家を壊して建て替えようとする場合
●知り合いから個人取引などで土地を購入された方が住宅を建設される場合
建築業者がその土地に関わる水害リスクについて、注意喚起する訳ではありません。
説明がなかったことをクレームとして言うことはお門違いになります。
「もうすでに土地を持っている方は十分その土地のリスクが理解している」ということが前提となっているからです。
すでに土地を持っている方はその土地に関する水害リスクをご自身で調査し、今後どのような行動を行うか(建てるか、そこには建てないか)をご自身で決定しなければなりません。
その土地にまつわる様々なリスクを詳しく調べる方法にハザードマップなどがあるのです。
ハザードマップについてはこちらのページでも説明していますので、ご確認ください。
・ハザードマップで調べて風水害を避ける土地に住もう【方法・手段1】
・風水害と住む地域について【基礎知識2】
家づくりガイドでは、このほかにも家づくりに関する役立つ知識を、「基礎知識」・「法律」・「方法・手段」でご紹介しています。他の記事もぜひ家づくりのご参考にしてください。