風水害に強い家づくりをするための方法編2
耐風等級や浸水対策を考えた家づくりをしよう【方法・手段2】
風水害に強い家づくりについて耐風等級と浸水対策にフォーカスして説明します。
風水害に強い家づくりとは?
前回の記事、ハザードマップで土地を調べて、風水害を避ける土地に住もう【方法・手段1】では家づくりを行う前の、土地の選び方と土地について知っておくことの大切さなどをご説明しました。
今回は新築やリフォーム、戸建ての家づくりについてです。
土地を十分に調べて、不安要素をすべて排除できた土地に家を建てるということであれば、あまり気にしないで家づくりを行っていただくことができます。
しかし、この島国日本では、なかなかそのような土地を見つけるのは難しいでしょう。また、土地の危険要素を確認しながらも「どうしてもそこに住みたい・住まなければならない」といったケースもあります。
そういう時はその土地が持っている危険性を排除する性能を持つ家を建てなければなりません。
風水害と住宅(建物)の性能【基礎知識3】でも説明したのですが、自然災害のなかで「土砂災害」と「津波」を建物で対抗できる建築技術は現段階で存在しません。
これらはやはりハザードマップ等を活用し、土地を良く知るべきです。
今回は、自然災害のなかでも家づくりでできること、風に対しての「耐風等級」や、「浸水対策」にフォーカスして説明します。
●耐風性能が高い家づくりをしよう
品確法の住宅性能表示制度には耐風等級という物が有り等級が2段階用意されています。こちらについては「風水害に対する法律や決まり」にも記載があります。
<耐風等級とは>
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」における性能表示制度では、域の気候・風土など個別の事情などを考え合わせて、性能の最適な組み合わせを選択する為に2つの等級が示されています。耐風等級は
500年に1度発生する暴風力が基準となっています。
等級1が建築基準法並み、等級2が等級1の1.2倍の強度を持つ住宅です。
どんな地域で家を建てるにしろ、これからは
等級2の性能を持つ家を建てられることをおすすめします。
また、2019年の千葉県の台風被害では強風自体で屋根を飛ばしたりしたことよりも、強風による飛来物が窓を割って、強風が室内に入り込み屋根を飛ばして被害を大きくした例が多く見受けられたからです。
近年のサッシやガラスの性能は向上しました。
強風で大きくはらむことはあってもガラスが割れてしまうことは稀です。しかし強風によって飛ばされてきた様々な物がガラスに当たると簡単に割れてしまいます。飛来物はよけられません。
飛来物から守る手段として、雨戸やシャッターは非常に有効な策といえます。瓦や看板等の飛来物であれば雨戸やシャッターがそれを受け止めガラスが割れる事を防いでくれます。
「予算の都合でシャッターは1階だけ」と考えられる方がいるかもしれませんが、台風被害を考えると全部の窓にシャッターを付けることをおすすめします。
しかし、一方で強風地帯である石垣島などでは「シャッターはレールから外れやすく役に立たない」という話もあります。石垣島では強風による飛来物の対策は、3cm角程度のネットを窓の前に付ける事が一般的です。3cm角程度の粗いネットは風に煽られず、飛来物が飛んできた場合はしっかりと受け止めガラスに当たる事を防いでくれているからです。
沖縄ではこれらネットの他、雨戸や板を窓の外に貼る事が一般的です。
現段階では、本州でそこまで必要かと言われると難しいですが、今後地球温暖化が進む中で、選択肢の一つとして考える必要も出てくるのかもしれません。
● 浸水対策を考えた家づくりをしよう
洪水や高潮時に浸水域となる地域に、どうしても住まなければならない場合に、完全ではないですが、被害を軽減する策を家づくりで講じることができます。
それは
「居住スペースの床を高くして出来る限り浸水しにくくすること」です。
しかし、あくまで確率を下げる策でしかありません。
一般に建物の地面からの高さは1階天井が3m、2階天井が6mぐらいです。
浸水想定高さが5m以上になる様な地域では2階建の場合、建物の限界を超えていて有効ではありません。
居住スペースの床を高くする方法は2つあります。基礎の高さを高くする方法と生活する上で重要な空間である居間を2階や3階にする方法です。
<基礎の高さを高くする>
住宅の基礎は一般的には標準仕様で地表から約45cmくらいあります。
その上に床の厚さが約16cmくらいあります。人は地表から約60cm上で暮らしています。
地表から45cmまではコンクリート製の基礎だけなので、仮に浸水しても排水し泥を除去出来れば生活復旧は比較的容易に行えます。
また止水措置が充分に行われた基礎であれば基礎内に水が入ってくる事もありません。
しかし45cmを超えて床の厚さの所まで浸水すると被害は急に重大になります。床の厚さに中には木材や合板の他、断熱材等が重ねあわされて組上げられています。また隙間も多数存在します。
そんな中に泥水などが入ってしまえば、隙間に泥が詰まり、木材は濡れそのまま放置すればカビが発生して強度も落ちます。繊維系断熱材で有れば泥水を吸った綿のようになってしまい、断熱性能は無くなります。
見えている所から水をかける程度では、洗浄する事や泥を排出する事は出来ません。床面を解体し、濡れた床材や断熱材を撤去した後、土台や柱を洗浄し乾燥させ、再び新しい床材や断熱材で復旧する必要があります。
そうならない為にも基礎の高さを高くすることです。いわゆる「高基礎仕様」です。高基礎は一般的にオプション仕様として用意されています。
新潟など雪深い地域では2mを超す高基礎を行う地域もありますが、浸水対策としては1m程度が一般的だと考えられます。
●「高基礎仕様」のメリット
・基礎を高くする事で、床上浸水の可能性は確率的に下げることができる
・水に浸かったとしても比較的復旧は容易
・近隣との視線高さが変わることや湿気対策
・設備の点検の容易さなど
●「高基礎仕様」のデメリット
・建物の高さが高くなることで、場所によっては法的規制を受けて2階の空間が狭くなることがある
・日々階段を多く上がる暮らしが余儀なくされる
・将来バリアフリー住宅にリフォームしにくい
<生活する上で重要な空間である居間を2階や3階にする>
これは、いわゆる2階リビングです。2階建ての場合は、1階に寝室や個室や風呂や納戸を配置して、2階を居間にします。
3階建てでは1階を駐車場や倉庫や玄関だけにして、2階を居間に3階を個室にします。
<2階リビングのメリット>
・1階が浸水しても生活で多くの時間を過ごす居間が被害を受けない
・被災時や復旧工事時に居住スペースは確保されるので、ストレスは大きく軽減される
・貴重な家財道具の水没も防ぐことができる
<2階リビングのデメリット>
・日々2階まで上がる事を余儀なくされる
・将来高齢化して足が不自由になった時に住むことが困難になる
・大震災が起こった時、1階から倒壊するという危険がある
いかがでしょうか?
今回は風水害に対しての家づくりにフォーカスし、説明しましたが家づくりには総合的な判断が必要です。
家づくりガイドでは、災害に関しては「地震に強い家」にフォーカスした記事もあります。
よかったらぜひそちらも参考にしてみてください。