<災害 法律>風水害に関する法律を知ろうシリーズ

風水害に関する法律や決まり【法律・決まり】

2020.05.14

風水害に関する法律や決まりについて説明します。

建築基準法

日本で建築物を建てる際に必ず守らなければならない法律が建築基準法です。


この法律の中にこれから建てる建物が必ず備えなければいけない基準が示されています。
この基準が守れていない建物を建てることはできません。
その求められる性能に合致するように、建築士は建物を設計する義務を負っています。
災害の中の風水害で、 建築基準法で定められているのは、強風に対してと一部だけですが土砂災害に対してです。

●強風に対しての項目

風水害と住宅の性能【基礎知識3】 でも少し触れましたが、建築基準法には住宅の風に対する強さが求められています。
建築基準法が定める木造住宅の風に対しての構造確認方法は大きく分けて2つの方法があります。


壁量計算 構造計算 です。


●壁量計算

一般に4号建築物といわれる、一定規模以下の2階建の住宅に対して、適応できる比較的簡易な確認方法です。
風圧力の計算では建物の一定のルールでの外壁面積に係数を掛けその力を求めます。
その力に耐える事が出来る壁がどの位存在するかで判定を行います。
地域毎の風の強さの違いは2種類のうちどちらかを選びます。



災害 法律 壁量計算


●構造計算

構造計算では、3階建や2階建でもより詳しく構造計算を望む住宅会社や顧客に対して「許容応力度計算」を初めとする強度確認があります。
この計算手法では地域毎に設定された50年に一度の大型台風を想定した30m/秒~46m/秒までの範囲内で国土交通大臣が定めた基準風速に基づいて確認を行います。


さらに家が密集しているか、野原の真ん中にぽつんと立っているかで風の影響が異なります。
ですので、各地域にさらに「地表面粗度区分」が定められその状況も計算に加味されます。

災害 法律 地表粗度区分
災害 法律 風に対する必要壁量を算出する際に用いる係数



ここでは群馬県と大阪府の地表面粗度区分を紹介します。

このように数値や表紙スタイルは各地域によって異なります。

地域ごとに壁量計算に比べて、より地域の気候特性に応じた住宅を建てることが出来ます。

●土砂災害に対しての項目

土砂災害特別警戒区域内においては構造規制が設定されています。

区域内では主に鉄筋コンクリート造等の建物とする事が決められています。しかし、住宅個別の構造確認の中には土砂災害に対する項目はありません。

品確法

国内で建築物を作りには必ず守らなければならない法律は上記の建築基準法です。
他にも、任意ではありますが「品確法」という法律があります。


品確法とは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略で、


1.新築住宅の瑕疵保証制度の充実 

2.住宅性能表示制度の創設

3.住宅専門の紛争処理機関の設置

の3本柱からなります。


住宅会社はこの制度を利用し、自社が建てる建物の強度を示すことに利用したり、顧客は自身が求める性能を住宅会社に示すことに活用されています。
品確法では「強風」に対してのみ、項目があります。

●強風に対しての項目

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」における性能表示制度では、域の気候・風土など個別の事情などを考え合わせて、性能の最適な組み合わせを選択する為に2つの等級が示されています。


・等級1は建築基準法に規定される性能と同等の性能です。

・等級2は建築基準法に規定される性能の1.2倍以上の性能が示されています。



災害 法律 住宅性能表示基準の耐風等級


毎年のように巨大台風が来襲し、今後も温暖化の影響で台風が巨大化すると予想される現代において、
等級2は必須であると考えられます。


品確法での風圧力の計算方法は建築基準法の壁量計算の風圧力計算よりさらに詳しく計算されます。

許容応力度計算時に使用する基準風速に準じた細やかな区分で確認されますのでより安心だと考えられます。

その他の法律

自然災害から暮らしを守るために、建築基準法・品確法以外にもたくさんの法律や条例が定められています。

宅地造成等規制法

「宅地造成等規制法」とは、がけ崩れや土砂災害等が懸念される区域内での宅地造成工事について、災害防止のために必要な規制を行うことを目的に制定された法律です。
区域内の宅地造成工事を行う場合に、斜面を支えるコンクリート等による擁壁(ようへき)が技術基準に適合していることを示してから工事を開始する必要があります。

さらに工事終了後に基準に適合しているかの検査を受ける必要もあります。


造られた擁壁が基準に適合していれば検査済証が交付され、住宅が建築できる条件が整います。
これを「適合擁壁」と呼びます。

逆に古い擁壁や技術基準を満たしていない擁壁を「不適合擁壁」と呼びます。


新築住宅を建設する際は、盛土が1m以上の時、もしくは盛土が1m以内でも切土と共に2m以上の場合は、この検査済証が必要となります。
また土地の売買においても擁壁などが有る土地を購入する場合では、この検査済証の有無を確認する事が大変重要です。


検査済証が無い土地で住宅の新築を行おうとした場合、様々な追加の工事を行う事になります。
費用も想定以上となりますので注意が必要です。

●条例

条例とは日本の現行法制において地方公共団体が国の法律とは別に定める自主法の事で、様々な事が条例で制定されています。
地方自治体によりその条例内容は異なります。


例えば滋賀県の条例では200年に1度の大雨で3メートル以上の浸水が予測される区域を対象として、住宅を新築 ・増改築する際に

敷地をかさ上げするなどを行い、想定される水位より高い位置に居室を設けるよう義務づけています。


このように地域の自然災害の特徴に応じ建築の規制がされる場合があります。
お住まいの地域の条例に従い新築計画を進めてください。

●言い伝え

最後に「言い伝え」です。
この現在において「言い伝え?法律や決まりではないじゃない。」とお思いかもしれません。

 
しかし、自然災害から身を守るには国や自治体の法律や条例に従うことももちろん重要ですが、昔からその地に伝わる「言伝え」に従う事も重要な要素です。
東日本大震災の津波被害でも、「あの神社より低い所に住んではいけない」といった言い伝えが実証された地域も多くありました。

 
昔からその土地に住んでいる人は「絶対住まない」とされている土地に新築が建ち、数年で豪雨があってその土地が水害被害にあったという話も実際にあります。
言い伝えは過去からの伝聞で、日々の暮らしで過去の自然災害の恐ろしさは日々忘れ去られてしまいますが、石碑や言い伝えは地域にその記憶を残してくれます。
時間があれば、土地に古くから住む住人に言い伝えを聞いてみたり、古文書や石碑の確認もしてみることをおすすめします。

PAGE TOP