地震に強い家づくりのために知っておきたい基礎知識シリーズ

地震に強い家の構造【基礎知識3】

2019.10.21

地震に強い家づくりを行うときに必要な基礎知識、「耐震」「制震」「免震」について解説いたします。

地震に強い建物

地震が発生すると上下左右に地盤が振動し、その力が建物に伝わり建物自体も上下左右にに大きく揺さぶられます。
人が住む空間を作るために上に伸びた構造物は、横方向の揺れに対し大きく揺さぶられ、壁は平行四辺形に大きく変形します。
ある程度迄の揺れであれば変形は小さく済み又元に戻る力が働きますが、それ以上の大きな揺れが入り大きく変形した場合は元に戻る事が出来ず、さらに鋭角な平行四辺形となり、最後は上階や屋根の重さに耐えられなくなり上階が下階を踏みつぶすように倒壊していきます。このステップについては「地震で引き起こされる災害【基礎知識1】」でも解説しています。

このようなことが起こらないために様々な技術が開発されています。その代表的なものが「耐震」「制震」「免震」です。

耐震

耐震とは字のごとく地震に耐える技術のことです。
大雑把に言えば壁を強くして平行四辺形にならないようにする技術と言えます。揺さぶられても頑として変形しない振動に耐える構造体が性能の高い耐震住宅といえます。
しかし、ただ壁だけ強くすれば大丈夫というものではありません。いくら壁が強く平行四辺形にならなくても横から押され足元が浮き回転してしまえば同様に上から押し潰されてしまいます。

<耐震構造のPOINT>

耐力壁で揺れに抵抗する

強い壁を作ったらその強さ以上に強い基礎を作りその基礎と壁を強い力に堪えられる金物で緊結します。
基礎にしっかり両端を固定された壁は足元が浮くことなく回転もせず、地震による揺れで壁が平行四辺形になることを防いでくれます。

耐震性能については建築を行う際に必ず守らなければいけない建築基準法に基準が明記されています。その結果、耐震性能のない建築物を建てることができないようになっています。
ただ、建築基準法での規定は古く定義された耐震性能は最低基準と考えるべきであると考えます。
今後あるべき住宅の性能は品確法という任意の法律で定義されていて、それを基準に考えられることをお勧めします。

制震

制震とは地震による揺れを制御する技術です。地震が起こると家が大きく揺さぶられます。その揺れの大きさは地面から離れるほど大きくなり上階に行くほど大きく揺さぶられます。制震装置には様々な原理がありその手段も様々ですが、共通して言えることは建物の壁の中に機器を備え付け、地震により建物の壁が平行四辺形に変形しようとした時、その揺れの振幅と異なる逆の振幅の力を発生させ地震動による揺れを打ち消し減らす技術です。

<制震構造のPOINT>

制震装置で揺れを吸収する

上階が大きく揺さぶられることを防ぎ建物の倒壊の危険性や損傷を最小化します。



制震性能により揺れが打ち消され2階から上の階の揺れは小さくなります。しかし1階の揺れは制震装置があっても地震の揺れと同じで小さくなる事はありません。
つまり、制震とは上階ほど大きくなる揺れ幅を抑えることで上階の揺れを小さくし建物の損傷を防いだり、倒壊の危険性を少しでも回避するための技術で、1階の振動を小さくするものでは無いということです。



制震性能は法律上必須のものではありません。法律上必須の耐震性能にプラスアルファする技術ということで、予算に余裕があれば付けられるとさらに良いという、お金で買える安心と言えます。
ただ近年、制震装置が普及するとともに価格も低減し、多くの住宅会社で標準仕様となってきています。

免震

免震技術では地盤と基礎はしっかりと繋がっていますが、基礎と建物の間はしっかりと繋がれていません。
鉄球や滑りやすい物で繋がっていて、地震で地盤が揺れた際基礎は揺れてもその上の建物は鉄球が有ることで転がったり、滑りやすい素材があることで滑ったりして揺れが伝わらない仕組みとなっています。
紙の上におもちゃの自動車などを起き、紙を素早く前後に動かしても上に乗った自動車はほとんど動かないです。免震技術はそれとのと同じ原理でできています。

<免震構造のPOINT>

免震装置で揺れを伝えない

震度7の揺れであっても震度5ぐらいになると言われています。
家のどこにいても揺れは小さくなり恐怖感が少なく、家自体の傷みも少なくなります。


ただ非常に良い工法ですが基礎と建物がくっついていないということで様々な解決すべき問題が発生してします。

問題1:風

台風のような強い風は地震と同様に建物を横から押し倒す強い力になります。
免震構造は基礎と建物が繋がっていないために強い風が吹くと家が動いてしまうので、それを止める技術が必要となります。


問題2:地盤

液状化地盤など地盤が弱い場所には建てられません。
もし地盤が不等沈下したら基礎と建物が繋がっていないので建物が基礎から転がり落ちてしまうからです。


さらにカーポートなど家の周りのものを家が動く分だけ遠ざける必要や、エアコン室外機などは家の壁に引っ掛けるなどの処置が必要となります。


非常に効果の高い技術ではありますが、上記のような制約が多いことや費用が高いこと、さらに未知の地震に不安が残ることなどであまり普及が進んでいません。

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