地震に強い家づくりのために知っておきたい法律や決まりシリーズ

耐震性能を確認する「建築基準法」【法律や決まり1】

2019.11.01

日本で建築物を建てる際に必ず守らなければならない法律の建築基準法について解説します。

建築基準法

建築基準法には家づくりにおいて建物が必ず備えなければいけない耐震性能が明記されています。建築基準法が守れていない建物を建てることはできません。その求められる性能に合致するよう建築士は建物を設計する義務を負っています。
これから建てる建物が地震に耐えられるだけの壁の強さがあるかどうか、壁の配置やバランスが適切かどうかなど耐震性能を確認します。

耐震性能の確認には大きく構造計算壁量規定の2つの方法があります。

構造計算

構造計算では木造住宅でよく使われる構造計算方法として許容応力度計算があります。耐力壁の強さや建物の重さから柱一本にかかる力まで割り出し確認する方法です。


かなり正確に計算することができますので正確さを求める人はこの方法を採用することをお勧めします。ただ、詳しい計算するために費用が掛かりそれが障害となって普及が進んでいません。

壁量規定

木造住宅で最も多く採用されている確認方法は壁量規定です。木造軸組構法やツーバーフォー工法など普及が進んだ工法で特例的に認められた簡易な確認方法です。
構造の専門家でない伝統的な大工さんでも計算できるよう工夫されていて、一定係数に面積をかければ必要な耐力壁の数が算出でき、その数分の壁があればOKというものです。
簡単で費用もかからないのですが非常に使い勝手をよくした関係で簡便でありすぎて、複雑な形状の建物や吹き抜けの大きな建物などの安全性を確認するには不安が残ります。


また、4号特例という規則で確認結果を提出することが免除されています。そのために誰のチェックも受けず家ができてしまう状況にあります。
多くの住宅建設で活用されている壁量規定ですが、安全を気遣う専門家の間ではこの壁量規定や4号特例に疑問を投げかける人も多いのが現状です。

構造計算と壁量規定どちらを選ぶ?

この2つの方法のどちらを選択するかは精度と簡便さのどちらを重視するかで決められます。
非常に詳しく計算する構造計算は安心ですが費用がかかり、簡易な壁量規定は安価にできますが複雑な建物には適しません



住宅会社毎にどちらの方法を採用しているかはほぼ決まっています。費用がかかっても安心を売りにする会社、安価に合理的に作る会社で異なります。
その住宅会社がどちらの方式を使っているかまず調べることをお勧めします。
どちらの方式を選ぶかは施主である、皆さんの意思次第です。簡易であるからといって弱いというわけではありません。どれくらい正確に細かく計算するかの違いです。

構造計算か壁量規定か



さらに覚えておくこととして建築基準法に示された耐震性能は最低限であるということです。「震度6強で倒壊しても中にいる人の命が守られる」が基準となっています。


しかし皆さんが求める性能は「震度7の地震が来ても損傷がなく、その後も安心して住み続けられる」ではないでしょうか。そのギャップがあることを覚えておいてください。

それなら何を基準にしたらよいかというと、建築基準法より「さらに良い」「もっと良い」性能を規定した品確法という法律があるのでそれを基準にされると良いと思います。
品確法については別ページで解説いたします。

偏心について

壁の配置やバランスが適切かどうかなど耐震性能を確認する基準として「偏心」があります。

偏心とは耐震性能を担う耐力壁などの耐力要素のバランスを見ることです。十分な耐力壁があってもその配置に偏りがあると、固いところと柔らかいところのバランスの悪さにより地震発生時に建物が揺さぶられると建物はねじれてしまい、せっかくの耐力を生かしきれないばかりか、損傷さえ発生し兼ねない状況になってしまいます。


そうならないためには耐震性能を担う耐力壁を家全体にバランスよく配置する必要があります。
耐力壁がバランスよく配置された家は、地震発生時にも家全体の耐力壁がまんべんなく地震力を受け止め変形が小さくなり倒壊に至る危険性が小さくなるばかりか、家の傷み自体も軽減してくれます。


偏心も確認方法が複数あります。もっとも詳しい確認方法は重心と剛心の差を計算で求め偏りがないか確認する偏心率計算です。逆に簡易な方法が4分割法です。

偏心率計算は家の重さの中心を求めるとともに、耐力壁の配置による硬さの中心を求めその差が一定範囲に入っているか計算で求める方法です。
正確に家の硬さと重さのズレを計算で確認できる方法ですが、計算には専用ソフトや計算行為が必要になり手間と費用がかかります。


一方、最も簡易な方法の4分割法は建物の平面方向を東西と南北方向に4等分し、一番向こう側と一番手前側にある耐力壁の量を比較しその差が一定範囲内のあることを確認する方法です。

非常に簡易な方法で専用ソフトも不要で計算に時間もかかりません。ただし家が四角形の場合に結果は正しく反映されますが、L字型など複雑な平面形状の家では計算結果と実際の性能との差異が出やすいのが欠点です。

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