風水害に強い家づくりをするための方法編1

ハザードマップで調べて風水害を避ける土地に住もう【方法・手段1】

2020.05.21

ハザードマップやその他の方法を用いて、風水害(台風や土砂災害など)を避ける土地選びについて説明します。

風水害に強い家とは?

風水害に強い家・・・ここまでの記事をご覧いただいた方であれば、住宅の性能だけで風水害から住む人の命や財産を防ぐ事は、出来ないことをおわかりいただいているのではないかと思います。


台風のように何処に住んでいてもある程度の被害を覚悟しなければいけない災害もありますが、風水害に遭いやすい・遭いにくいは「何処に住むか」でほとんど決まってくるのではないでしょうか。
今回と次回で、「極力、自然災害に遭わない土地に住む」+「それでも避けきれない場合は災害に強い家を建てる」のセットで「風水害に強い家づくり」についてご説明します。

風水害に遭わない地域に住もう

皆さんもご存知の通り、風水害については地球温暖化が進み異常気象が毎年のように起こる時代に入り、近年激しさを増しています。今までの常識が通じなくなっていると考えていいでしょう。

【これから家を建てようとする方】

今までの常識や経験に囚われずに最大限の想像力を働かせて家づくりを行う必要があります。

【これから土地探しを始めようとされる方】

土地選びで、自由な選択ができます。敢えて危険な土地に住むことはないのです。
極力風水害を初めとする自然災害に遭わない土地を探しましょう。

【既に土地をお持ちの方】

まず、ご自身が持つ土地がどのような危険性を持っているのかその特性を十分に把握してください。
土地の危険性を調べる資料については「風水害と住む地域について【基礎知識2】」で説明しています。


もしお持ちの土地がそれらの警戒地域に当てはまる場合、土地があるからそこに住むという前提を一旦外してください。
特に、津波や土石流の様な住宅の仕様では防ぎきれない、災害の危険性があるようであれば、住み替えを是非検討することをおすすめします。


幸いにも住宅の設計や仕様で防げる災害で、やはりその土地に住みたいということであれば、これから起こるかもしれない災害の可能性を見つめなおして、その災害に対処した安全な家づくりを行う必要があります。

ハザードマップのイメージ

●強風地域を避けるためには

台風やゲリラ豪雨は日本のどこに住んでいても被災する可能性がある災害ですが、厳密に言いますと地域によってその強さは異なっています。


日本列島でみますと、「風の強い地方」と「比較的穏やかな地方」とがあります。
それら各地方の標準的な風の強さを示したものが「風水害と住む地域について【基礎知識2】」でも説明した基準風速です。


基準風速は建築物を設計する際の耐風性能を計算する際に使われる数値です。
過去の台風の記録に基づき、50年に一度の大型台風を想定し30m/秒~46m/秒までの範囲内で国土交通大臣が定めた風速です。
この数値を見るときは地域毎の風の強さを比較としてみてみるとわかりやすいです。


ここに基準風速の一例をご紹介します。


●八王子・立川:32m/秒

●23区:34m/秒

●千葉市:36m/秒

●木更津市・銚子市:38m/秒



ちなみに日本で基準風速が最も強いのは、奄美大島や沖縄県の46m/秒となります。


また、基準風速以外に「風水害に対する法律や決まり」でも説明した地表面粗度区分というものもあります。地表面粗度区分とは、地表面の粗さを意味する用語でIからIVまであります。

地表面粗度区分の説明

上の図を見てください。

Iが最も平坦なところを示しており障害物がなく風が強く当たる場所を示しています。
逆にIVは都市化が極めて著しい地域で風が比較的弱い地域を示しています。


例を出しますと、東京都新宿区は基準風速が34m/秒で、地表面粗度区分はⅢです。

木更津市の場合、基準風速は38m/秒で、地表面粗度区分はⅡもしくはⅢです。

この場合は耐風性能によっては、新宿区で建てられる建物であっても、まったく同じものを千葉の木更津市では建てることができないことがあるかもしれないということになります。

「基準風速や粗度区分で風が強いから危険で住まない方が良い」と土地の選択までは考える必要は全くありません。
この土地がどんな特性を持った地域に住んでいるのかということを自覚して、風の弱い地域に比べ、風が強い地域の場合は
台風などの被害に対してワンランク上の備えをする・家づくりをする」といった活用の仕方をしていただければ幸いです。

●洪水危険地域・高潮危険地域を避けるためには

洪水については、その土地が洪水被害を避けられるかどうかは他より具体的な判断が可能です。
今から住もうとしている土地が洪水の危険性があるかどうかは洪水ハザードマップを見るとわかります。


近年、巨大台風来襲時にテレビのニュースなどで紹介されましたのでご存知な方も多いと思いますが、各地域の行政や国が危険度を示した地図で、一般的には内水氾濫と外水氾濫が個別に記されています。

0〜50cm 50cm〜1m など浸水予想深さが色分けで具体的に示されています。当然全く浸水の危険性の無い地域もありそこには色付けがされていません。


先ほどの基準風速や地表面粗度区分の説明でも例として挙げた、東京都新宿区のハザードマップを見ていきましょう。
0〜50cmの浸水予想深さが黄色、50cm〜1mが薄いオレンジです。


このことから、人が多く集まっている市街地でも浸水の可能性がある地域が多いことがわかります。


また、河川の大小に関わらず河川の周囲は何らかの想定域が示されています。また内水氾濫は河川周囲に限らず発生の危険性があります。
川から離れた場所に住むのであっても必ず見るようにしてください。
今から土地を決めようとしている方で候補地が浸水域に指定されているようであればその土地は極力避けた方が良いでじょう。


たとえ50cm以下であったとしても、過去の常識が通用しない時代に入っており予想以上の浸水が起こることも想定しておかなければならないでしょう。
「風水害の種類と住宅へ及ぼす影響」でも説明したように、洪水をはじめとした水害はその後の生活復旧に大きなダメージを与える災害です。極力遭わないよう配慮すべきでしょう。

また高潮についてもハザードマップが用意されています。

新宿区 高潮ハザードマップ ~高潮浸水想定区域図(浸水深)~
新宿区 高潮ハザードマップ ~高潮浸水想定区域図(浸水継続時間)~

引き続き、新宿区の高潮ハザードマップを見てみましょう。神田川があることで多くの地域が想定区域に設定されています。
上の右の図は浸水継続時間です。新宿区では浸水継続時間も公開されています。


一部の土地では1週間以上浸水が継続すると想定されている区域もあります。高潮は川を遡上します。
内陸部だから大丈夫と考えるのは危険です。一度、お住まいの地域の高潮ハザードマップを見てみてください。

●津波の危険地域を避けるためには

津波も川を遡上しますの。
内陸部だから安心せずに「津波ハザードマップ」を一度は見るようにしてください。

津波の恐ろしさは東日本大震災でみなさん目の当たりにされたと思います。

その破壊力は凄まじく住宅規模の建物であれば漂流物などの破壊力も加わり一撃で破壊されてしまいます。



やはり津波の危険性が示された地域などは避けて暮らした方が良いのではないかと考えられます。
しかし、どうしても住まなければならない場合は日頃から地震が起こったら家を捨て逃げる覚悟を持つ必要があります。
ハザードマップは津波もあります。地域によっては、「浸水ハザードマップ」や「水害ハザードマップ」と一緒になっている場合もあります。


関西地方では、平成25年8月に大阪府が公表した「南海トラフ巨大地震による津波浸水想定」を受け津波ハザードマップを作成している地区もあります。


津波ハザードマップ 大阪府高石市


画像は大阪府高石市のハザードマップを引用したものです。

ハザードマップ以外にも津波被害を予想できるツールがあります。

それは「標高」です。東日本大震災では20m級の津波が来襲し、遡上高は40mに達しましたので、
やはり標高30m以上のところに住むのが安心だと考えられます。標高を知るには、マピオンなどの地図ソフトが非常に分かりやすく表示されています。
例えば新宿が標高39mで渋谷が標高19mです。


また、埼玉県の内陸地域に加須という町があります。内陸地でも標高は、渋谷区より低い14mです。
普通に考えるとまさかここまで津波が来るとは思えませんが、標高は思っている数値ではなく、このように意外性がある場合が多いです。

しかし、標高に過敏になりすぎると日本の大都市の多くの標高は30m以下です。標高30m以下地域を避けていれば住む場所は極端に限られてしまいます。

大都市の中心地に住む場合は、ほとんどが標高30m以下なので「津波の可能性がある」という意識を持ち、常に避難する意識をもって暮らすことが大切です。


他に興味深いソフトで「FLOOD MAP(フロードマップ)」というものがあります。
これは以前、地震に強い家でもご紹介したソフトです。地図上で海面高さを上下させることができ、どこが水没するかが一目でわかります。





これはFLOOD MAPで東京都あたりを表示し、海面高さを7mと設定したときです。多くの地域で水没しているのがわかります。
地球規模で情報がありますので、ご自身が住んでいる地域でも、海外の気になる土地についても知ることができます。

●土砂災害を避けるためには

土石流についてもハザードマップが用意されています。多くは土砂災害危険度マップとして・土石流・地滑り・土砂崩れの3種類がひとつの地図に色分けされて載っています。

土石流 ハザードマップ 新宿区

こちらは新宿区の土砂災害ハザードマップです。
区内でさらに細かく区域を区切って詳細を表示しています。


土砂災害警戒区域をイエローゾーン、土砂災害特別警戒区域をレッドゾーンと呼び、色分けされて地域が指定されています。
ハザードマップを見るときは、山沿いばかりでなく地域に関わらずチェックしてみてください。都市の中の日頃見落とすような起伏の箇所でも指定されていることが多くあります。


危険地域であるようであれば住むことは避けた方が良いと思います。
どうしてもそこに住まなければならない状況であれば、さらに現地も確認して、危険な箇所がご自身の所有する土地か、他人の土地かを確認してください。

<ご自身でお住まいの土地の場合>
急傾斜の土地を支えている擁壁というコンクリートの壁があると思いますが、その安全確認を行うことをおすすめします。


擁壁のイメージ


古い擁壁の多くは「不適格擁壁」と呼ばれ、その上には新築住宅を建てられない擁壁です。


素人では判断できませんので、専門家に診てもらい適格という事であれば、住宅の新築へと計画を進めればよいのではないでしょうか。
不適格擁壁で危険性が有るということであれば、住宅新築の際にコンクリートの擁壁を造り直す必要があります。
ただ、費用は皆さんの想像以上にかかることになると考えられますので住宅建設費と合計して資金計画を見直してください。


他人の所有物の擁壁が不適格擁壁で皆さんの家に危害を及ぼす可能性があることがあっても、皆さんはどうすることもできません。

行政に訴えても、今の日本では他人に改修を強制する力はありません。そのような場所に敢えて住む必要はないと思いますので候補地から外してもいいでしょう。
ちなみに新宿区は、がけ・擁壁のハザードマップも公開されています。


新宿区 崖・擁壁ハザードマップ


<今回の記事で画像引用・参考にしたWEBサイト>

新宿区ハザードマップ https://www.city.shinjuku.lg.jp/anzen/anshin00_100002.html

FROOD MAP  http://flood.firetree.net/?ll=33.8339,129.7265&z=12&m=7

大阪府高石市津波ハザードマップ http://www.city.takaishi.lg.jp/kakuka/soumu/kikikanri_ka/map/tsunamihazardmap.html

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