風水害に強い家づくりをするための方法編3
災害発生時の避難について考えよう【方法・手段3】
今回は風水害などの災害発生時の避難について説明します。
災害発生時の行動<宅内避難と宅外避難>
前回・前々回と災害発生(風水害)を避ける土地についてと、災害に強い家づくりについて説明してきました。
今回は家づくりの観点からはずれるかもしれませんが、家づくりが済んだ後、「その家に住む皆さんの災害発生時の安全」についてです。
強風による被害や洪水・高潮による被害は、日本にいる限りは避けられない自然災害です。
過去の経験から造り出されたハザードマップも、近年の台風の巨大化においては想定外の事態に対処出来ていないかもしれません。
予想外の事態が起こるこれからの時代、災害に対しては想像力を最大限発揮しましょう。災害発生時に、これから何が起こるかという最悪の事態を考える必要があります。
皆さんは「正常性バイアス」という言葉をご存知でしょうか。
「正常性バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種。 社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。-wiki pediaより引用」
災害発生時にもこの「正常性バイアス」は働いてしまうことがあります。
正常性バイアスによる「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価せず、行動に移す勇気が必要です。災害発生時の行動とは、「避難」です。
過去には正常性バイアスが働いてしまい、避難が遅れて災害の犠牲になった悲しいケースも実際に起こっているのです。
避難は大変重要な行動です。避難といっても種類があります。自宅内での避難を指す「自宅避難」と自宅から別の場所へ避難を行う「宅外避難」です。どちらも事前の備えが必要です。
今回は、その「宅内避難」と「宅外避難」についてご説明します。
●自宅避難
台風や水害などの災害発生時に、家の中で避難を行うことを「自宅避難」といいます。家の中でも災害によって「安全な個所」と「安全ではない箇所」が存在します。
「安全な個所」に避難することです。
強風(台風など)での自宅避難
台風で強風が吹いている時、室内で一番危険な場所はどこでしょうか?
答えは「窓際」です。
雨戸やシャッターがある場合は、必ず閉めましょう。雨戸やシャッターがない場合は、カーテンを閉めて窓際から離れましょう。
なぜなら強風によりガラスが割れ強風が吹きこんで来た時、割れたガラスや飛来物で怪我をする可能性が非常に高いからです。風下側の窓の少ない部屋で窓から離れて台風が通り過ぎるのを待ってください。
大雨や強風を写真や動画に収めようと窓に近づくのは非常に危険な行為です。SNSよりも命を守る行動をしましょう。
水害(大雨・洪水)での自宅避難
大雨・洪水などの水害に対しては当然ですが、高い場所に避難する事が大切です。
水害の恐れがある場合は、車を高台に避難させたあとに、貴重品や当面の生活物資を2階以上に上げます。
水害に何度も遭ってきた福知山には「タカ」という伝統家屋があります。
「タカ」は上部に滑車が付いた吹抜けがあり、荷物を上に揚げる事を容易にした構造となっています。
また2階上部に物を入れる空間があって、物資をそこに置く事が出来ます。
それと同時に、その空間から天窓を通り屋根に逃げられるようにもなっています。長年の経験がそのような伝統建築を作り上げてきました。
現代の家でもそのヒントは活用することが出来ます。洪水被害が起こる可能性が高い地域では、そのような伝統建築の知恵が役立つかもしれません。
土砂災害での自宅避難
大雨が長引いた時、土砂崩れに備えて睡眠場所をガケから遠い場所にすることが重要です。
中小規模の土差や崩落では崖側の部屋には土砂が流入しますがその逆の部屋は被害を免れる事が出来る場合が多くあります。
さらに崖から遠い2階が有ればそこで災害が終息するのを待つのも良いかもしれません。
しかし土石流や大規模なかけ崩れなどが起こってしまうと家そのものが流されたり倒壊・生き埋めになる可能性が多くあります。
このような場合は自宅避難は意味がありません。
事前に情報を収集し、災害が発生するまでに「宅外避難」を終えてください。
●宅外避難
地震災害のように一瞬で危険な状態が襲ってくるのと異なり、水害や土砂災害はジワリジワリと訪れます。
正常性バイアスが働き、「まだ大丈夫」という意識で何の行動も取らないうちにどんどん事態は悪化します。
そして気が付いたらその場にいるしかできない状況になっていることもありえます。
「まだ大丈夫」と思う時期だからこそ「いま」避難することです。
異常な音や、今まで以上の出水があったらすぐ避難する必要があります。
携帯電話に届く、注意報・警報にも注意しましょう。
2021年通常国会で災害対策基本法の見直しが行われる予定です。
災害の危険が切迫している場合に自治体が出す避難情報のうち、「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化し、これまで避難勧告を出していたタイミングで避難指示を発表することになります。
これは近年、大規模な豪雨災害が相次ぐなか、避難を促す情報をより分かりやすく整理し、住民の逃げ遅れを防ぐ事を目的にした改正です。
この図はあくまでも参考としてください。この図では段階的になっていますが、どのレベルの発令がどの時間差で出されるかは誰にもわかりません。
先ほどまで警戒レベルが2だったのが、あっという間に警戒レベル4や5へ引き上げられることも考えられます。
災害発生時には時間がありません。日頃から家族内で確認しておいてください。
<家族内で事前に確認しておきたい事項>
●非常持出袋の中身
●非常持出袋の場所
●誰が持っていくか
●避難場所
●家族間の連絡方法
●集合場所
いかがでしょうか?今回は避難についてもご紹介しました。
しかし、住宅レベルの建物は大きな自然災害に対しては非力な存在です。
家にいるから安心と家を過信せず、早めに避難所に避難してください。