住まいを断熱する必要性と断熱のしくみ

断熱材と断熱工法について【基礎知識】

2019.03.20

住まいの性能を考える時に、断熱性能という言葉は必ずと言っていいほど耳にすると思います。なぜ住まいづくりにおいて断熱が必要なのでしょうか?そもそもなぜ断熱材で断熱ができるのでしょうか?ここでは住まいの断熱に関する基礎知識を学んでいきましょう。

断熱の役割

適温は冬で20度から24度、夏は25度から27度と言われています。外部の気温がずっとこの程度であれば年中快適に暮らせますが日本には四季があり一般地でも冬はマイナス10度近くになり、夏は40度を超えることがあります。また近年温暖化の影響からか記録的な寒波や災害級の猛暑が続いています。

これら過酷な外部環境に対し快適に過ごすためには、室内を適温に保つ必要があります。そのために夏は冷房、冬は暖房装置を働かせるのですが、熱は高い方から低い方に流れます。せっかく快適な温度にしようとしても冬季に外部に熱が奪われたり、夏季に外部から熱が入ってきたら、冷暖房装置がいくら頑張っても適温になりません。
そこで断熱という壁や天井や床から入ってくる(逃げていく)熱の移動を小さくする性能が必要となってきます。これが断熱性能です。

熱の伝わり方 断熱と遮熱の違い

熱の伝導形態には「伝導」「対流」「放射」の3つがあります。このうち「伝導」「対流」を起こしにくくしているのが断熱の原理です。
残る「放射」についてですが、夏には強い日射が入ってきて室温を上げることがあります。これを熱放射と言いますがこれを阻止するには断熱ではなく遮熱という性能が必要になってきます。

不透明な壁では断熱性が遮熱性を兼ねますが、ガラス窓は断熱性があっても光を通すので光が熱となって放射されます。そのために窓には断熱性能以外に遮熱性能が必要となってきます。

熱が奪われている状況

住まいは床、壁(窓)、屋根(天井)に包まれた空間ですが、そのあらゆる箇所から熱は逃げて(入って)きます。

その割合は夏で、窓など開口部から70% 壁から13% 床から3% 屋根天井から9% 換気から5%の比率で外から熱が入ってきています。
冬は窓など開口部から48% 壁から19% 床から10% 屋根天井から6% 換気から17%の比率で外に熱が逃げていっています。(調査各社によって異なります)
意外にも窓などの開口部からの損出(流入)が激しいです。次に多いのが壁となっています。
それら全ての箇所に断熱を行う必要があります。

断熱の基本原理について

断熱とは「伝導」「対流」を起こしにくくすることです。その為に断熱材は熱を伝えにくい素材でできています。
金属や鉱物、樹脂や木材、液体や気体等様々な物質が有りますが、「熱伝導率」という熱を伝える能力が最も低い物質は、分子量が少ない気体です。
気体には水素やヘリウムやフロン等様々有りますが、住宅の断熱材に使用している気体は最も手軽で何処にでもある空気を使用しています。その空気が動いてしまったら「対流」となり断熱性が失われてしまうので、空気を静止させておく必要が有ります。その役割を担うのが断熱材です。

ほとんどの断熱材は、布団の綿のような「繊維系断熱材」と、樹脂を発泡させた「発泡系断熱材」の2種類に分けられます。

繊維系断熱材は、繊維と繊維の隙間を小さくする事で空気を閉じ込めて断熱性能を作り出しています。
発泡系断熱材は小さな泡の塊のような形状をしており、その泡の中に空気を閉じ込め動かさないようにして断熱性能を作り出しています。
このように、断熱性を発揮している物は、その物自体ではなくその中に含まれる空気が熱の「伝導」を抑える役割を担っているのです。

高断熱の効果とは

そもそも住宅の断熱性能を上げるとどんな良い事が起こるのでしょうか。
高断熱の効果は色々ありますが、最も大きいものが住む人の安全・健康に貢献するという事です。現在、交通事故の死亡者数は4千人弱となっていますが、家庭内事故による死亡者数は1万4千人弱です。そのうち最も多いのが「溺死」です。5千人強が亡くなられ、65歳以上が9割を占めています。原因は、「ヒートショック」と呼ばれる現象です。暖房をしている部屋から寒い廊下を経て寒い洗面所へ、そして冷たい体のまま熱い湯につかる事で、血圧が大きく上下し心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまう現象を言います。これを防ぐには家全体の断熱性能を上げどの部屋も同じ暖かさを保つ事が最も効果的です。

また近年、近畿大学建築学部の岩前教授が行った、約3万5千人の高断熱高気密住宅に引っ越した人(30~40歳代とその子供達)を対象とした調査では、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、関節炎、アレルギー性鼻炎など15の諸症状で引っ越し後、明らかな改善がみられ、特に断熱性能が高い家に引っ越した人ほど改善率か高くなったという報告がなされています。

住宅の断熱性能が高くなる事で光熱費も掛らなくなります。国土交通省の試算では、昭和55年以前に建てられた住宅では年間13万3千円光熱費が掛っていたと予想されますが、現行基準の家では5万2千円程度と試算されています。このように、断熱性能の高い家は住む人の財布にも優しい家となっています。

更に近年政府は「2020年までにハウスメーカー等の建築する注文戸建住宅の過半数でZEHを実現する事」を目標に掲げています。ZEHとは、断熱性能と省エネ性能を上げ、再生可能エネルギーを導入する事で、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにする住宅です。計算上では暖房・冷房・換気・照明・給湯に関わるエネルギー消費がゼロとなり、家計に優しい事は勿論、Co2排出の抑制など地球規模での貢献が可能です。

地域ごとに異なる断熱性能基準

南北に長い日本では地域によりその気候は全く異なります。そのために守るべき断熱性能も地域により大きく異なります。
平成25年基準と呼ばれる基準では、全国を8つの地域に分けその地域の気候に適した断熱性能が示されています。北海道など寒冷地では高い断熱性が求められ、沖縄では日射取得の遮熱に重点が置かれています。
その区分は都道府県などの区分ではありませんので詳しくは専用のホームページをご覧になるか住宅会社にお問い合わせください。

気密性能の必要性

住宅の高断熱化と共に行わなければならないのが、気密性能の向上です。
気密性能を上げなければならない理由は4つあります。

1つ目は、外気の侵入を防ぐためです。高断熱化で快適な室内環境を作っても外気が入ってきてしまえば元も子もありません。気密を高め隙間を無くす事が断熱効果の最大化に貢献します。

2つ目は、断熱性能を発揮するためです。断熱材は、空気を狭い空間に閉じ込める事で断熱性能を作り出しますが、隙間から風が入り込んでしまうと空気が動き、断熱性能を発揮できなくなってしまいます。これを防ぐために気密を行い、断熱材の中に風を入れないことが必要です。

3つ目は、結露を防ぐためです。夏、冷たい水をグラスに注ぐとグラスに水滴がつくように、湿度を持った温度の異なる空気が接すると温度差で「結露」が起きます。断熱性能の低い昔の家では、冬に室内の壁にびっしりと水滴が付く事がよく有りましたが、断熱性能の上がった近年では室内から見えるところで結露を起こす事は無くなりました。
しかし壁の中にある断熱材の中では今でも起こりうる現象です。これは内部結露と言われ、普段の生活で見えないところで起こります。冬、外気に比べると室内は湿気が大量に発生しています。壁や床に隙間があると、その中に室内の湿った空気が入り込み、結露が起こりやすくなります。内部結露が起こると、結露水によりカビや腐敗菌が発生し、柱や梁などの腐れにつながります。家の寿命を短くする恐ろしい現象です。
内部結露を防ぐためには、気密性能を高めて湿度の高い空気を壁の中に入れないようにする事が必要となります。

4つ目は、計画的な換気を行うためです。気密と少し矛盾する話だと感じるかもしれません。
計画的な換気は、普段の生活で室内に溜まる水蒸気や二酸化炭素や汚染物質を速やかに排出するために必要です。空気は入りやすい所から入り、出やすい所から出て行くため、隙間のある無計画な換気では十分に換気できない空間ができ、空気がよどみます。空気のよどみは健康被害を引き起こします。きっちりと気密を行う事で、計画的な換気を行うことができ、よどみのない室内環境を作り出せます。

以上のように、住宅の高断熱化には高気密化が大変重要なポイントになります。

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