地震に強い家づくりのために知っておきたい基礎知識シリーズ
地震と地域・地盤について【基礎知識2】
地震は日本のどこにでも起こる可能性のある災害です。しかし、住む地域によってその被害に差が出ることは事実です。
地震動や地震よって引き起こされる災害に強い地域、弱い地域について解説をしていきます。
住む地域で変わる被害の差
地震動による地域被害の差
阪神大震災や熊本地震の被災地を調査した時に強く感じたことですが、同じ震度7の地域でも街を1ブロック移動しただけで建物の被害に大きな違いがありました。
阪神大震災では西側では海に近い南側の地域で被害が大きく、東に行けば山に近い北側の地域に被害が多く発生していました。そしてその状況は帯状に続いていました。その被害が激しい帯状の地域から横に進むと100mもたたないうちに被害が幾分小さな地域が現れてきました。
これはやはり直下型地震においては断層直上のような地域や揺れが伝わりやすい地域、地盤の弱い地域などで被害が顕著になっているという事だと思います。
熊本地震でも同じようなことが見られました。橋1本隔てただけで建物の被害が大きく違う地域が数多く見られました。地震の伝わりやすい地域を調べることは難しいですが断層が通っている場所や軟弱地盤を知ることは容易におこなえます。そのような場所はなるべく避けたほうが良いでしょう。
もし今住んでいる場所がそのような場所であったとしたら、他の地域より1ランク上の耐震性能を持つ家を建てることをお勧めします。
二時災害としての火災の被害の差
地震発生に伴い火災が起こる確率は非常に高いです。さらに地震直後は119番が殺到し消防署による通常の消火活動ができなくなり、自助共助で消火せざるをえない事態となります。
まずは自宅から火を出さないことが一番大切ですが、火をもらわないような地域に住むことや、多少の火をもらっても燃えにくい家を作ることが大切です。
<燃えにくい家づくりのポイント>
・火を出さない為に、オール電化など火を使わない生活を行いましょう。
・仮に火を出してしまってもその部屋で封じ込められる耐火性能の高い内装にしましょう。
・近隣から火が出ても高い耐火性能を持つ外装材や窓を使うことで火が来ても燃え移りにくい家を作りましょう。
住宅が密集する地域は延焼の危険性が高い地域でもあると言えます。特に都心の下町など古くて燃えやすい建物が密集している地域は、地震での倒壊だけでなく火災が発生しやすく、火に弱い危険な地域であると言えます。住宅密集地に住むということは延焼の危険が高いところに住んでいるという自覚を持つ必要があります。
できれば周辺に新しい家が多く建ち、敷地に余裕があり家と家が離れて建つゆとりある住宅地に住まわれることをお勧めします。
土砂災害の被害の地域差
地震動は建物だけでなく地盤にも大きなダメージを与えます。大震災では必ずと言って良いほど地滑りやがけ崩れが起こっています。
熊本地震でも家は地震動に耐えることができたのに地盤が崩れ住めなくなってしまった住宅は多くありました。家を頑丈にする前に地盤を頑丈にするか、頑丈な地盤に住むことが非常に大切です。
平らな土地で土砂災害はほとんど起こりません。土砂災害が起こる多くは急傾斜地と言われる山の斜面のようなところです。
土砂災害が起こりそうな急傾斜地はあらかじめ行政で調査されていて、崩落の危険がある箇所は「土砂災害危険個所」として指定されています。その数は全国に42万カ所あります。
さらに危険な箇所は「特別土砂災害危険箇所」として27万カ所も指定されています。
<参考>各都道府県が公開している土砂災害危険箇所と土砂災害警戒区域(国土交通省WEBサイト)
土地を探す際にはそのような地域に指定されている場所は極力避けたほうが良いでしょう。
土地には掘り出しものはありません。「安い!」と思っても急傾斜地で家を建てるには高額な費用をかけ「擁壁」というがけ崩れを防止する壁を作らなければ家が建てられない場合があります。
その結果、総額では同じかそれ以上かかってしまったという話はよくあります。急傾斜地は危険な上、費用がかかる土地であるとも言えます。
知っておきたい地盤の性能
家に性能があるように地盤にも性能があります。
災害がきて家は大丈夫でも地盤が弱ければ家は危険にさらされ結局住めないということになってしまいます。
性能の良い家を考える前に、性能の良い土地かどうか見極める必要があります。土地の性能にはどのようなものがあるか解説いたします。
軟弱地盤
地盤の性能で最も代表的なものが地耐力です。地耐力とは地盤が建築物などの重みにどの程度耐えられるか、また、地盤沈下に対してどの程度抵抗力があるかを示す数値です。
単位は「kN/㎡」で、1平方メートル当たり「何kNの重さまで耐えられるか?」示す値となっています。もし地耐力より上に乗る建物の方が重いようであれば沈下して沈むか傾いてしまいます。
軟弱地盤ではよく起こる現象です。軟弱地盤の多くはむかし海や川や田んぼや沼地だった所を埋め立てた場所に多く見られます。また川沿いで過去から何度も氾濫を起こしてきた場所も軟弱地盤であることが多いです。
人為的な原因として盛土もその代表的なものです。谷だった所を埋め立てたり、「擁壁」という壁を作って斜面に平らな場所を作ると自ずと土を盛ることになりそこが盛土と言われる場所になります。
2004年新潟中越地震で崩壊した盛り土による造成宅地で、 擁壁で支えられていた急傾斜地が地震動により崩落した画像です。
盛土は地耐力が低いだけでなく地耐力が不均等に分布していることが多くあります。その場合不等沈下という沈む度合が異なる現象が起き家が傾いてしまうことが度々発生しています。
そうならないために住宅を建築する際には事前に地耐力を測り建物の重さに耐えられるか、また不均等に地耐力が分布していないかどうか調べます。
建物の重さより地盤の方が強ければ問題ありませんが、不足している場合や不均等な場合は一考する必要があります。
しかし弱い地盤だからと言って家が建てられないというわけではありません。基礎の形状変更や杭を打つことで軟弱地盤であっても家を建てることはできます。
正しい対処さえすれば将来まで安心して暮らすことができますので、軟弱地盤だからと言って恐れることはありません。ただしそれなりの費用がかかってきますので予算計画を組み直す必要が出てきます。
液状化地盤
液状化地盤とは地盤の中に多くの水を含んだ地盤です。地震により振動を受けた時、中に含まれる水分が地表に溢れ出し、その体積分だけ沈下するのが液状化現象です。
多くはもと海や池や沼を埋め立てたような水分量を多く含んだ地層で起こります。
液状化現象が起これば多くの場合家は沈下し、傾いてしまいます。土中に含まれていた水分や砂が抜けた地盤はそのままでもとに戻ることはありません。
地盤の液状化は臨海部だけで起るものではありません。2004年新潟中越地震では山間部の川口町でも発生しました。
基礎が弱い家であれば不等沈下とともに家自体も歪み最悪の場合倒壊する危険性があります。基礎が強く全体が傾いて場合はジャッキでもとに戻すことも可能です。ただ数百万円単位の費用がかかってしまいます。
液状化があらかじめ起こることが予想される地盤では、住宅建設前に液状化対策工事を行うことができます。方式は様々ありますがどれも災害後の復旧費用より安いですがそれなりにかかります。
これらの対策費用のことを考えれば、これから土地を探そうとしている方なら液状化しそうな地域は避ける事が賢明と考えます。