風水害から住宅を守るために知っておきたい基礎知識シリーズ

風水害と住宅の性能【基礎知識3】

2020.05.08

風水害に対する住宅の性能について説明します。

家を建てるうえで災害から命を守るための住宅性能というのはどういったものなのでしょうか。

しかし、強風に対する基準や決まりや耐風性を高める技術はあるものの、洪水や土砂災害に対してその災害から住む人を守る基準や性能はほとんどないのが現状です。
これだけ毎年のように何かしらの風水害が起こっているのに、それに備える性能については特にないのです。
そのため、実際に家に住んでいる皆さんが風水害に対して知識を持ち、住む場所や日頃からの備えを充分に行う事が重要なのです。基礎知識1では風水害の種類と住宅への影響・基礎知識2では、住む地域について説明してきました。


第3回目となる今回は、現在制定されている風水害に対しての住宅の性能についてご説明します。

●強風に対して住宅の性能

日本は当たり毎年のように台風被害を受けています。
そのため、風水害の中でも強風に対しては建築を建てる際に、基準を満たすよう義務付けられています。


建築物を設計する際、耐震性能を満たす為に、「耐力壁」という横方向から家を押す力に耐える壁を「どのような強度」で「どのくらいの量」を「どこに」配置するかが検討されます。
風に対しても同様の検討がなされます。それぞれの面に対し風が当たった時の風圧力(風が建物を押す力)に耐えうる耐力壁を上記の要領で配置していきます。

風水害 住宅 :耐力壁  風水害 住宅

風の力は建築地毎に決められた基準風速に基づいて計算されます。
次回の「法律やきまり」の項目で詳細を説明しますが、建築基準法に風圧力計算が定められています。


品確法における性能表示制度では2段階の強度が示されています。
構造体以外のサッシ等にも耐風圧性能という基準が日本工業規格(JIS)で規定されており、使用する環境で必要とされる性能を選べるようになっています。
日本サッシ協会JSMAでは耐風圧性能についての資料も公開されています。(リンクはPDFです。)


https://www.jsma.or.jp/Portals/0/images/sash_pro/pdf/030_JIS%20Sound%20environment.pdf

●浸水に対しての建物の性能

洪水による床下浸水や床上浸水、軽度な津波や高潮による同様の浸水に対して、建築基準法や品確法において、その対策としての規制や規定は存在しません。
また住宅の一般的な性能としても「耐浸水性能」という分野は無く、浸水に対抗できる技術の確立も行われていないのが現実です。


ただ、近年洪水被害が毎年のように繰り返されていることから、一部住宅会社や建材メーカーでは浸水に対抗する技術や部材の開発を行おうとする動きが出てきました。

2019年10月には防災科学技術研究所と住宅メーカーの一条工務店が防災科研内の大型降雨実験施設で、ゲリラ豪雨や洪水に対応できる「耐水害住宅」の公開実験を行ったというニュースもありました。


今後はこのような仕様の住宅も増えていくのではないでしょうか。
また、津波想定域や浸水想定域での住宅の建設を制限したり、地盤の嵩上げ等の対処をした住宅でないと建築を許可しないという規制を行う自治体も出てきています。

●土砂災害・津波に対しての建物性能

建築基準法では、住宅が建つ地盤が大雨や地震により崩壊した時に住宅が倒壊や崩落する事を防ぐために、地盤に応じた基礎設計や杭の仕様を義務付けています。
これらは敷地内の比較的小規模な盛土の崩壊に対しては有効ですが、その住宅地域全体で起こる大規模な地滑りや崩壊ではその効果は及びません。


襲いかかるがけ崩れや、建築地盤崩壊による建物の崩落などに対して、住宅の倒壊を防いだり、中にいる住人の命を守るための技術は、特別に存在しません。
それらは一般的な耐震や耐風性能に委ねられます。
土石流の直撃や大規模ながけ崩れに対しては、建物の性能においては、ほとんど無力な状態であると考えて良いでしょう。

また、津波に対しても同様のことが言えます。津波に対抗する建築技術は現段階で存在しません。
規模にもよりますが東日本大震災で発生した様な10m規模の津波に対しては、ほとんど無力な存在であると考えてよいでしょう。

風水害 住宅 : 土石流被災家屋保存公園  風水害 住宅

土石流被災家屋保存公園

風水害 住宅 :東日本大震災の津波被害  風水害 住宅

東日本大震災の津波被害

いかがでしょうか?
台風に関しては、住宅性能の基準はあっても他のものはほとんど立ちはだかる風水害に対して、これといった建築技術や、住宅性能の基準がまだないのが実情です。
次回は風水害に関する住宅の法律について説明します。

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